しぶしぶ落ち込みながら下へ向かう。途中、「あ」という少年の声が聞こえたので目線をやるとあからさま私を見ている。それはもうじろじろと。そんな守くんそっくりなバンダナを頭に巻いている彼から発せられた一言が私を奈落へと突き落とした。
「ひ、ひいばあちゃん……、!」
ひいばあちゃんとは曾祖母ということですか。君や私みたいな年齢からみて母さんの母さんのそのまた母さんと言うことですか。なら君は曾孫か。
『きみ。失礼にも程があるって』
私だってまだ14歳。誰だか知らないやつにひいばあちゃん呼びされるとは思っちゃない。ごめんなさい!と謝って走り去る男の子。あれ、準決勝見なくていいの?
「あ、名無しのさん」
こっち。手を振りながらアピールを見せてくれた木野さんの隣には音無さんと雷門さんとマネージャーが勢揃いしていた。部員のメンバーは監督と話し合いをしているらしい。
「にしても私驚きました!」
まさか名無しのさんがマネージャーになるなんて!私だってなりたかった訳じゃないのよ。ただ単に守くんの悪知恵が働いて今ここに居るだけなんだから。とは言えず、苦笑で誤魔化した。雷門さんがおずおずと守くんに好意を寄せているの?的な質問をしてきたものだから少し大きめな声で否定の言葉を返した。返答に肩を撫で下ろす音無さん以外の二人。ああ、守くん。君ってモテキ到来中だったんだ。
『…………』
彼の本性を知らないから好印象を抱けるのだろう。時間にルーズそうに見えて実はぐちぐちうるさいのだとか、一言一言が重いとか。もとより大介さん仕込みのブラックは治しようも治りようもない。皆無、試すだけ無駄。それくらい守くんは大介さんに依存していた。ううん、今も大介さんのノートという形で依存している。
つまりおじいちゃんっ子は恐い。
多分二人に言っても信じないだろうけどね。
「じゃあ私たちもそろそろ行こう?」
『ん、どこに』
守くんそっくりのあの子が頭から離れないのです。
「円堂くんのところに決まってるじゃない」
『……ですよねー』
2013.4/21
- 112 -
[*前] | [次#]