『ヒューデレラ……か(つか、ヒューバートってすごい演技力だなぁ)』
階段下に落ちてあったストラテイムの角でつくられた靴を拾い、小さく呟いた彼に、誰もダンスを誘うことができなかったようでした。
────後日。
いつものように姉たちにこきつかわれているヒューデレラの家に城からの訪問者が現れたのです。従者を連れたナナシが、あの、ストラテイムの角でつくられた靴を持ってきたのです。
「この靴の持ち主を知りたいのだが……知っている人はいないだろうか」
従者のアスベルと名乗る少年が例の靴を見せる。
「あ………、」
あれは私の履いていた靴。だけど今の私の格好はとても晒せるものではないわ。そう思うとヒューデレラは俯くことしかできませんでした。
姉のシェリア、パスカル、マリクと履いてみようとするが勿論のこと入りません。
ふと、ヒューデレラはナナシと目があいました。
『アスベル、ちょっとその靴をかしてくれないか?』
「はっ……、この靴をですか?」
『ああ』
ナナシはアスベルから靴を受け取り、ヒューデレラの前に靴を置きました。
『ハニー、この靴を履いてくれないかな?』
「…………」
ヒューデレラは静かに靴に足を入れました。スッとフィットするように入り、ナナシ以外の皆の顔が驚愕に包まれてしまわれた。
『やっぱり、ハニーがヒューデレラか。出会えてよかった。……これでも探したんだぜ?』
「私は…………貴方と…」
『おっと、その先は俺に言わせてくれや。……ヒューデレラ。俺と共に来てくれませんか?』
その言葉と共にナナシはヒューデレラを抱きしめ、ざわめく外野をBGMにヒューデレラはニッコリと笑うのでした。
「はい、よろこんで!」
こうして、ヒューデレラとナナシは末永く暮らしましたとさ。
パチパチと歓声が沸き起こる。
うまく言ったようでほっとしながらも私の心音はうるさいのだろう。抱き締めるったって顔が近い……!
恥ずかしくて顔が真っ赤だよ。ゆでダコだよ!
「フッ……」
教官に小さく笑われ、不意に背中を押された。
体勢が崩れ、ギリギリヒューバートに支えてもらったはいいけれど………その時、唇を触れたような気がした。
気のせいじゃない……気がする。
………私もヒューバートも真っ赤だから。
チラッとマリク教官を睨む。いまだにニヤニヤと笑っていたのが見えた。
────この人は、確信犯か。
ヒューバートも私もデレデレラ
(ご、ごめん。教官に押されちゃって………)(いえ……、あの…)(は、はやく幕がおりてくれるといいのにね)(そ…そうですね)
おまけ
────そのまた後日。
「いやぁ、【ヒューデレラ】好評だったよ!んで、次の話も決めたんだけどやってみn「『やりません!』」
ヒューバートと私、顔を真っ赤にして断った。そんな私達をみて、そして教官の笑みをみて、アスベルとシェリアは何かを納得したらしい。表情がそう語っていた。
もしかして【シェリ雪姫】のやりおわったあと、変にそわそわしていたのって、私たちと同じパターンだったからとか?
とりあえず、教官は敵だ
(私はそう思うことしかできなかった)
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