An unsafe 場所 !?


……………。

アリスって意外と体力あるのね。私関心しちゃう。ブラッドに頼まれたお仕事、アリスのボディーガード。いやはやこの世界に不慣れな私をよく選んだものだ。まあ、苦肉の策と言いたげだったし私も迷子になる可能性も低くなることだろう。
そんなこんなで私は現在アリスに同行していた。アリス曰わくハートの城に向かっている。すごい、現在木々に囲まれたところを歩いているけれどお城の天辺らしきところが見えるよ。現物は果てしない規模なことだろう。

「アリス……、あなたいっつもこんなに歩いているの?」

決して疲れたわけではないのだけど。まだお城にたどり着いていない。新緑色に囲まれている。馴れない道だから仕方ないのかもしれないが代わり映えのしないところを歩くことほどしんどいことはない。

「もう少しだから頑張って」

ボディーガードさん。と続けるアリスは私がついてくることを喜んでいるらしかった。鼻歌交じりにスキップ。まさにこれがルンルン気分だろう。
木々を抜けたら街が見えた。街の中心にはたぶん目的地であろうハートの城がそびえ立つ。帽子屋屋敷でも外観に圧倒されたというのに、お城と言うだけはあって見ているだけで迷子にでもなってしまいそうだ。


(この巨大迷路を抜けなきゃ行けないの?)

お城へと向かうには難所がある。目の前の迷路を前に私は絶対に用事があっても一人じゃ来れないと確信できた。アリスが進む。私も進む。アリスが止まる。私も止まる。アリスがまた進み出した、私も続く。

「あれ、侵入者?参ったなぁ…ようやくたどり着いたのに」

つもりだった。のど先にあてがわれる剣がぎらりと太陽に反射する。息が止まるような思いとはこういう時につかうのだろうか。目線をずらせば笑顔の青年。とはいえ顔は見えない。口元の笑み。状況はミスマッチ。剣先は一切揺らぐことを知らない。
一瞬でも気を抜けば殺される。ハートの城も物騒ね。この世界に安らげる場所はないんだろうか。
在るというなら是非とも行ってみたい。

「ちょっとエース!何やってんのよ!」

気づいたアリスがあわあわと止めにはいる。アリスは人脈作りが得意そう。帽子屋さんとこの人も例外ではないけど物騒な人とばっかり関わっていらっしゃる。肝が据わっているのかなんなのか。アリス自身は武器を持たないし、今の私みたいな立場になったらどうするつもりなのか。

(誰かが助けてくれそうだけどね……、)

余所者は愛される。私、もなのかは分からない。現に今殺されそう。
青年は「冗談だよ」と爽やかな笑みを崩さず剣を下ろした。絞められていたわけじゃないけれど解放されたと共に大きく息を吸い込んでしまった。酸素が巡る。二酸化炭素を出す。私はまだ生きていた。

「……リアルに死を覚悟した、」

「ごめんごめん、素直に謝る。俺は騎士だからね」

でもそれくらい物騒なところだから気をつけるにこしたことはないぜ?と続ける爽やかな自称騎士様。こんな騎士様イヤだなぁ。名前はエース、らしい。ハートのお城の騎士のエース。何というかトランプの番号の人ってこともあって覚えやすそう。そんな彼のことをまじまじと見れば誰かさんにそっくりな気も。

(………?)

誰だろうか。私の知り合いにあんな爽やかな人は居なかったのだけど。でも、やけに引っかかる。上から下へとじっくりと。目に穴が開くくらいそれはじーっくりと。端っこでアリスがドン引きしているし、エースという人は爽やかな笑みから爽やかな苦笑に変わっているし。それでも笑顔を崩さない彼に私は初対面らしからぬお願いを口にする。

「エース、少しの間無表情になって」

は?と口をあんぐり開けたのはアリスだった。
エースのその赤い衣装、そしてそのにくったらしくなるほど爽やかな表情、それらの点が私の記憶をかき乱している、ような気がする。
無表情というよりは驚いたというような顔をしたエースの顔を見逃さなかった私は自分の記憶を掘り返す。いや、実際掘り返す必要もないくらいだ。考えたくなかった、私の幼なじみにそっくりだなんて。

(こんな、こんなに見かけだけは似ているのに……、)

「やっぱ他人の空似ね」

性格が全然違う。あいつは私に微笑まない。いや微笑まないは語弊が生じるかもしれないな。微笑むとかより先に喧嘩になっちゃうのだ。口喧嘩から殴り合いという男の友情でも築き上げるといいたげな話になるだろうが本当のこと。目の前の男はまるで似ているようで違う。

(…にしても目が笑ってない、)

幼なじみのほうがましだ。
そして私が拾われた場所が帽子屋屋敷でまだよかった。こんな得体の知れない人たちが多いのか。いや、帽子屋さんのところでもう充分ついていけないからこれ以上は巻き込まれたくない。




……………。




ハートの騎士。
〜 " that is right -- the interesting talk was remembered -- " 〜

2013.4/7


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