ここはパーティー会場。
色んなところから来たお姫様たちがおどっているのです。その中でも、先程、カボチャの馬車に乗ってやって来たとても綺麗な女性が一人。そうです。先程の光を浴びたヒューデレラなのです。
『おや、麗しのハニー?俺様とおどってもらえないか?(……、おじさん。私だったら絶対こんな人と踊りたくないんだけど。つか、髪が蒸れる!ウィッグつけると蒸れる!!)』
このパーティーの主催者であり、ほとんどの女性はこの方を目当てで来ているとも言われている、紅い髪が特徴のナナシがヒューデレラに手を差し出しました。
「えっ………(な、なんといえばいいのでしょうか。ナナシの格好に違和感が感じられません……!)」
『おどってくれませんか?』
ニッコリと笑う彼の手の上におずおずと自分の手をのせ、ヒューデレラはこう言いました。
「本当に私でいいんですか?」
『君がいいんですよ。さあ、ダンススタートだ』
ナナシの言葉と共に音楽が奏でられます。ヒューデレラと共にすんでいるシェリア、パスカル、マリクはそれぞれ、ヒューデレラを恨むような目付きで見ていたとか、そうじゃないとか。
「あの、私なんかとおどっていて楽しいですか…?(というか、顔とか身体とかが密着しすぎですよ!わざとなんですか!?)」
『まあな。俺様、ハニーにベタボレ?みたいな。なぁ…、俺様の嫁になってくんねぇ?んでなきゃ、俺様、許嫁って奴と結婚しなきゃなんねぇのよ(この役、口調悪いなぁ……、ヒューデレr…じゃなかった、ヒューバート、怒りたいのか顔真っ赤だし。後で謝っておこう)』
ヒューデレラもナナシのことを嫌いではないけれど、つい数時間にあったばかりの私のことを本当に好いてくれることなどあるのだろうか。そう思って俯いたその時……───
リンゴーンと0時を示す鐘の声が聴こえたのでした。
「わ、私…、もう帰らないと………!」
パッとナナシの手から離れ、城を出る。
『ちょっ、待てよ!あんたの名前、せめてそれだけは教えてくれ!!』
怪談の下、靴が脱げようとも気にせずに走る綺麗な女性を見ながらそう問う、ナナシにヒューデレラ。と名前だけを名のり、闇夜に消えていったのでした。
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