笑顔は脅しに有効

一之瀬が転校してきてからも別にいつもと何ら変わらない。染岡と他愛ない話や喧嘩をしたり一之瀬を軽くあしらったり半田のアホ毛を掴んでみたり。そんな代わり映えのない生活をして四日がたった。

「名無し!」

休み時間みんなに見せる元気の良い姿で騒がしく現れた守くん。でもチャイムが鳴った瞬間にドアからやってくるなんてあなたは超人なんですか。いや違ったか魔王だから魔神さまかな。

「言い忘れていたことがあったんだけどさ、今度の日曜、木戸川との試合見に来てくれよな!」

ああ、準決勝か。鬼道が木戸川うんたらには三つ子のフォワードがいるだのなんだのと、つい先日教えてくれたはずだ。ほとんど欠伸で聞いていなかったんだけど。

『うん。分かった』

断ったら何を言われるか分かったもんじゃないし。それにフォワードじゃない守くんのサッカーにも興味はある。あの攻めることを得意とする守くんがキーパーとして色んなボールからゴールを守っているなんて、幼稚園から小学生にかけての彼を知っているこっちの身としては摩訶不思議そのもので。

「よかったー…。ほら試合会場が木戸川だからこっちの応援少ないだろ?だから名無しだけでもってさ」

『でもマネジのみんなが応援してくれるんだからいいじゃない』

応援してくれないマネージャーなんて居ないだろう。えっと確か雷門理事長の娘さんもマネージャーをやっているんだとか。伊達に高飛車ツンデレをやってばかりじゃないって話なんだろうか。

「名無しが応援してくれなきゃ俺、次の試合どうなるか分かんないじゃないか」

星が付きそうなくらい爽やかに微笑まれてはビクつく私。分かんないじゃないかなんて私のほうが分かんないよ。あれだろ。ゴールを捨てて前に出ちゃう…とか。べつにサッカーで守くんが荒れたりしても私自身に被害がくるんじゃないし。つか本性表しやがったな、守くん程度に思うだけというか……。


「だから、ぜーったいに来てくれよな!」

『分かってるって』

行くって言ってるのに信用してくれないのは何故かな?

「絶対、ぜーったいだぞ!」

『絶対に行くってば』

2012.12/31


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