あの後、鬼道の手をつかんで逃げるようにして学校の中へと入った。本当は鬼道にかくまって欲しい気持ちで満々だったけど彼とは違うクラス。鬼道といるのは諦めて自分の教室の中へと入った。
『は、転校生?』
このクラスは大丈夫なのか。転校生って言ったら私がつい先日転校してきたばかりなんじゃないのか。そう思っていたら髪の毛チョコ色男子が「名無しのが来る前に転校してった奴が三人も居たんだよ。だからじゃね?」と教えてくれた。うん、お前誰。
『まあ変な奴じゃなきゃいいさ』
そう思っていた時期が私にもありました。
『げ、変態之瀬……』
これはもう鳥肌ものと言っても過言じゃない。朝にあった恐怖をまた味わなきゃいけないのか。まじか、え、なに。それは私を殺す気かまじ雷門に来てから色んなことに巻き込まれてんだけど。どゆこと。PTA代が払えなくなったからってこの仕打ち。ないわ。ふざけんなや帝国。PTAの皆様お金をとりすぎなんだよ。買収かよ、ないよ。ありえないよおおおおお。
「じゃあ一之瀬は森本の隣で」
森本というのは私の前の席の成績がいいスゴい奴。それよりみんな、思い出して欲しい。私が転校してきたとき、『窓側の席という個人的にラッキーとも思える場所だった。授業中に空を眺めることのできる幸福とはまさにこのこと』と思ったのだ。森本もこの条件に当てはまるであろう。森本の隣、つまりは染岡の前の席。
「やあ、俺だよ☆よかったー…左斜め後ろに名無しがいるんだね。いろいろ教えて欲しいな」
こっちがいろいろ尋問してあげたいです。にっこり笑顔の裏っかわの変態的な顔が今にも浮かんできます本当に。まじで雷門中って変な人しかいねえ。あ、ましな人が隣にいた。そうだ、彼に助けを求めよう。
『そ〜め〜お〜か〜あ〜。助け』
「却下だ」
速攻拒否。え、いくらなんでもそれは酷いよ染岡。いつもは無愛想に見えるその顔がもっと無愛想に見えるよ。なんなんだよその態度。つか一之瀬がニコニコこっち向いてるんだけど。マジでこっちみんな。
「ねぇ名無し。学校案内してよ」
『その言葉のボールは染岡にパスする』
騒がしい日常が始まりました。騒がしいのは主に誰ですか?
「却下だ」
『ちょっ、なんでそんなにいかつい顔しちゃってんのさ』
2012.11/13
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