集団リンチの間違いだろ

目の前をボールが行き交う。超次元技を使う時点で私の知っているサッカーじゃない。とは言えない。思えば帝国サッカーもこんなんだった。試合中にペンギンが出てきたり、室内で練習しているのに突風が巻き起こったときもあった。

『だけどわたし以外がみんな男なんて聞いてない』

ちらりとゴールを見ると守くんと目があった。早く動けって言っているようにも聞こえるが私にどうやって動けと言うんだろう。それより何で守くんがゴールキーパーやってるのかが疑問。昔はフォワードをやっていたはずだ。てっきり今でもフォワードで活躍しているかと思っていたのに。

『あっ』

いつの間にかパスがまわってきたらしい。が、私のスピードじゃあボールに追い付けなかった。ころころとボールがベンチに向かって転がっていく。あらら、これって守くんに怒られちゃうよね。

『すいませーん、ボール拾ってもらえませんか?』

声をかけたところ、ベンチ近くに立っていた少年はボールを蹴り転がしながらこっちへと向かってきた。ひいいっ、私はか弱い人間ですから超次元技だけは使わないでくださいいいい!

「へぇ…ここって女の子もサッカーしてるんだね」

いやいや私は無理矢理やらされているだけですから!そんなに速く向かってこないでください。ぎゅっと目を瞑ると風がさああっと過ぎ去るのを感じた。あれ、私になんも危害がなかった。

『ほええええ……』

すごい。としか言えない気がする。私はサッカーよく分かんないけど迫りくる人をパッパッとかわしていくその姿は本当にすごい。かわされた人たちもみんなぽけらーっと口を半開きにしたまま固まっている。やっぱり彼ってスゴいんだ。

「スピニング、シュートぉ!」

風に巻かれるかのようにして彼のボールは守くんがいるゴールへと向かっていった。でも守くんも負けてなんかいない。最近得意技にもなりつつあるらしいゴッドハンドで少年のボールを止めたのだ。


「きみの勝ちだ!」

「ペナルティエリアの中からシュートしてたらそっちの勝ちだった!」

ねぇ。わたし帰ってもいいですか、いいですね?

『……染岡。わたし帰るからあとは任せた』

「はぁ?ちょ、お前……!」

2012.7/30


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