『吊るされた男 6219年。
一時期ゲルテナは 雑誌の装丁の仕事をしており
ページの埋め合わせに この絵を載せたとされている
毎回挿し絵を載せていった所 これが好評で
後にこの雑誌で使用した絵を タロットカードにして
期間限定で 販売したこともあった。
現在 このタロットカードを入手する事は
ほぼ不可能となっている』
「こんなんゲルテナ展覧会に飾ってあったっけ。イヴ知ってる?」
ふるふる。首を左右に振ってるから見ていないんだろう。私も見てなかった…ような気がする。なんていうか…人が多くて見れなかった作品がちらほらあったから確証はないのだけど。私とイヴが知らないと言う中ギャリーだけがあら、と声をあげた。
「この絵、アタシは見覚えあるわ」
「うっそ。こんなムンクの叫びをひっくり返したような顔に見覚えあるだなんて」
将来ギャリーの顔もそうなったりしてね。ほっぺたを押しながらムンクの真似をしてみると一歩足をひいた状態で嫌な顔をする。そのままバックしていくと女の絵が。近くまで行くと額縁からでて追っかけてくるかもよーと声かけたらギャーッと騒いでイヴの後ろに隠れる始末。おいこらいい大人が子供の背中に隠れるな。
「気持ち悪いこと言わないでよ……、」
がっしり肩を掴んでいるギャリーを別に気にするわけでもなく「……服に番号書いてある」というイヴはホント大したものだと思う。それに比べてギャリーはだらしない。口調がオネェだけじゃなくて性格までもがそっち系なのか。頼りにならない男ね。なんて言ったら泣き出したりしないかな。
「あらホント。えっと…5629かしら」
「でも逆さまだよ?6295とかじゃない?」
額を外して逆さにかける。ほら、と重力に逆らっていない男性の服を指差せば訝しげにギャリーは反論する。
「それであってるの?アタシそんな単純だとは思えないわよ」
「私があってたらどうする?なんかくれる?」
物をかけるなんて子供ね。なんてギャリーは言うが本人も乗り気らしい。コートのポケットの中身をみせてもらう。あめ玉よっつにライター。強いていうなら腕時計も賭け品対象になるのかな。ちなみに私がかけるのはポケットに入っていた青い柄のもじゃもじゃくん携帯ストラップだったりする。憎めない可愛さってあるよね、うんうん。
「ま、大したものはもってないけどね。そうだ、イヴはどうする?」
「私をとるかオネェをとるか」
イヴは躊躇いながらも私の腕をとった。ぎゅ。って文字に現れそう。可愛いよイヴ。
「ふふ。イヴにまで見放されちゃったわねギャリー」
「別にいいわ。アタシが正しかったって認めさせてあげる」
「そんなギャリーにギャフンと言わせてあげるから」
アタシが言うわけないじゃない。どーだかねー?と会話をしながらダイヤルロックのかかった部屋へと向かう。途中、女の絵が動き出すんじゃないかとギャリーが勝手にはらはらしていたせいで何度も番号を頭からすっ飛ばしていたのは言うまでもない。
「あ、あら。おかしいわね」
ガチャガチャ。何度あわせても開かない扉にギャリーはてんてこ舞い。暇だから隣の扉のロックを外しておこうかと女の絵を数えにイヴと歩く。いちにさん…うん、大体分かった。イヴと二人で答えを唱えながら戻ると若芽がまだ奮起していた。もう諦めなさいよ。
「ふっふー。ギャリーさーん?早く開けてくれませんかー?暇すぎて女の人も数えちゃったじゃない」
「む…。そこまでいうなら逆さの数字にあわせてみればいいじゃな、……あ」
開く扉に唖然とするキミ
(開いたね…)(ギャリー?)(ギャフン)
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