ひとめぼれ。

ひとめぼれ。そう、その男の子を一言で例えるなら[切り株]。帝国の中でも一番目立つ彼…鬼道有人に私は中一の夏、恋をした。



切り株。そんなあだ名がついたのは入学式の日だった。新入生代表として壇の上にあがった彼を見ている当時は何の感情もなかったあの日の帰り、母さんが車の中で「あの鬼道さんの息子って切り株みたいだね」って言ったのだ。当然私は返す言葉も思い浮かばなく、鬼道さんの息子って何?と言った記憶がある。数ヶ月前の私が腹立たしい。

「鬼道さん!」

そう呼んだのは私でなく隣の席の佐久間くん。おんなじサッカー部だからなのか仲がいいので個人的に敵視している。純粋に恋をさせなさいよね、佐久間くんのバカ。
佐久間くんで思い出した。帝国のサッカーは総帥直々に育てているからなのかとてつもなく強大だ。勿論個人個人の力もそうなのだけどチーム力とペンギン力もハンパないと思う。鬼道くんが一生懸命指笛の練習をしていたのも見たことがあったりもする。

鬼道くん…かぁ。ひとめぼれって言っても会話なんて皆無。席替えに頼ってもどうしても遠い席に当たってしまう。かわりに佐久間くんや源田くんの席の近くになる確率が高い私は運がいいのかなんなのか。
好きな人に近づくには周りから!って誰かはいうけれど。周りも周りでとっつきにくい人たちばかりならどうすればいいのだろう。
佐久間くんはとにかく鬼道くん信者っぽいし、源田くんは髪の毛がライオンさんみたいで威圧的な印象。話しかける自信なんて微塵もない。

チラリと鬼道くんを見てみる。佐久間くんが鬼道くんに携帯ストラップについて熱く語っているようだ。そうだ、鬼道くんのゴーグルの中ってどうなってるんだろう。目はつり目なのかな、たれ目なのかな。いろんな鬼道くんの顔が思い浮かぶ。くすりと笑えば彼と目があった。あ、ヤバいそらさなきゃ。チラリと彼の奥の窓の外を見ている素振りをする。鬼道くんは何もなかったかのように視線を佐久間くんに戻した。

「はぁ…びっくりしたー」





恋愛成就はまだ先になります。
(辺見くん…私、どうすりゃいいの?)(いや、話さないことにはどうにもなんない…ってかわざわざオレのクラスに来てまで)(私にとっちゃそれだけ重要な話なの!)

2012.7/8


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