叶えてください。

携帯の着信音が部屋の中で騒ぎ始めた。珍しく私の家でお泊まり会を開いていたのだけれどその着信音で友達が意味深に「彼氏?」とふざけたことを言い出すので「ばーか」と返してやる。どうやら相手は倉間からだった。さっきの質問もあながち間違っていない。なんて訂正したら友達になに言われるか分かったもんじゃないから言わないけれど。

騒がしい部屋からベランダに出て通話ボタンを押した。空には星がちらちらと光っている。街頭もあまりない暗がりの住宅街だからだろうか。星を見るには実に穴場な私の部屋のベランダ。

「もしもし?」

こっちから声をかければようやくおんなじ返答が返ってくる。倉間から電話してきたんだから先に貴方の声を聞きたかった。って臭いセリフは私には合わない。
だから次の返答を待った。

『名無し』

両目には無数の星々が。左耳には私を包み込む風の音が。右耳には電話越しから倉間の声が。数々の幸せが私に起こってきた。今日はきっと占いのランキングも上位なんだろうね。

「ん?」

『……いや、別に対した用じゃねーんだけど。ただ、声が聞きたくなって』

なにこの人可愛すぎるよ。私は気恥ずかしくなって小さく笑う。そしたら君は「笑うな」って返すんだ。きっと君はガラにあわない言葉を言ったことにより照れているんだろう。想像しなくても君の顔なら浮かぶ。それくらい私は倉間が好きだったりするんだろう。

少し下らない会話を続ける中、私は星をずっと眺めていた。暇があったら星と星に線をなぞる。私の中には四季関係なく第三角形が存在しちゃうくらい。どれかの季節は確か第四角形だった気がするけれど私はいまだに第四角形は見たことない。

「あ、れ…?」

電話越しに『どうしたんだよ』って倉間が反応する。目の前に描いたへびのような形が姿を変えた。尻尾と見立てた星がカーブを描くように動いている。ゆっくりと、確実に。ヘリコプターや飛行機のような光じゃない。周りの星と変わらないようなその光。

「流れ星だ…、」

それは絵本などで見るものとはうって違って見えたが多分そうなのだろう。倉間が『見間違いじゃねーの』と言っているのを耳に私はジンクスを信じて静かに願った。





When You Wish upon a Star
(倉間。私、お願いしたんだ。絶対叶えようね)(何を願ったんだよ)(お願い事は言っちゃダメなんだよ)

2012.5/21


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