擬音だったのかもしれない

『スタート ボタンを プシュ!
 おすと メニューが ひらくなり』


「あ、グリーン」

ポケナビを片手にちょいちょい待ち人を手招く。ここはオーキド博士の研究所。グリーンのおじいちゃんの働き場所。オーキド博士に図鑑の調整をしてもらいに来たのだけれどまたしても外出中。有名人は忙しいのね。特に博士関係。こないだなんてウツギ博士がテレビに出ていた。名前を聞いたことがあるだけで実物は始めてみたのだが若いという感想しか浮かばなかったのを思い出す。ほら、だって自分の知ってる博士がアレだし。

「…なんだよ」

リザードンに乗ってきたのだろうか、髪が少し風に煽られてぼさぼさしている。わたしが連絡をいれてそれほど経っていないことをみると急いで来てくれたのだと思う。ちょっと嬉しい。嬉しいけれど多分このあとの質問で機嫌を悪くするだろう、下らないことでいちいち呼ぶな的な。

「押すって英語で言うとなんだったっけ」

「そんなのプッシュに決まってるだろ」

「だよねー」

「…………」

「…………」

会話終了のお知らせ。わたしが微笑むことに対しグリーンは無表情から一瞬まさかと目を見開き、何かを悟ったのかわなわなと震えさせた。そのカッコいい顔には青筋が浮かんでいるようにもみえる。そりゃジムリーダーをジムから出させちゃったんだもんね怒るわけだ。

「……アンタはオレを怒らせるためにわざわざマサラタウン<ここ>まで呼んだのか?」

「いやいやまさかー。ただ、オーキド博士にひとつ言っといてよ」

グリーンの頭の上に「?」と浮かんだような顔。わたしはこないだレッドと見ていた掛け軸とそっくりな隣の掛け軸を指差した。

「これこれ、この掛け軸。プシュって多分ポケモン図鑑のこのボタンを押せばいいってことだよね?プシュって」

おじいちゃん…、と頭を手で押さえる。そう、やれやれと言うような感じ。だけどやっぱり疑問に思うしかない。プシュなのだ。プッシュじゃないのだ。こんなことに反応するなんてわたしもまだまだ子供だなーとか思ってしまうけれど。

もとよりグリーンと会話できる機会もあんまり得られなくて。話せる話題のひとつとして取り出せたのは本当に好都合。わたしもレッドとグリーンのように目と目で会話できるようになってみたい。これ、わたしの将来の夢にしよう。

「あ、わたしドーブル持ってるよ。こっそり付け足しておかない?」

ホルダーからモンスターボールをとりだした。わたしはグリーン派なのであだ名は付けない。もともとあんまり図鑑を集めるような行動もしていないし。ドーブルの入ったモンスターボールの安全スイッチに指をあてるとその上からグリーンの手が添えられた。うわ、わたしより手のサイズ大きいな。

「……よしとけよ。おじいちゃんの芸術にケチつけると三時間のお説教があるんだ」

「へ。やったことあんの?」

「ま、昔に、な……」

「あらまー。グリーンってばやんちゃもん!もし人間図鑑みたいのがポケナビの機能でもついたら性格はやんちゃって記入されているだろうね」

そんなシステムがあったならばわたしには一体どんな性格になってしまうのだろうか。考えただけで嫌になるのであえて考えない方向で。

「そんな機能つくことなんて無いな」

「さーてね。それはどうなるかわっかんないよー?」





機能じゃなくて本かもしれない。
(漫画にはつきもんだよね。誕生日とかの赤裸々プロフィール本。ま、わたしには必要ないけれど)(俺だっていらねぇよ)(まったまたー。ブルーの情報とかいらないの?)(…なんでそこであいつの名前がでるんだ…?)



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