簡潔に答えましょう

午前七時。平日の午前七時といえば生徒玄関が解錠される時間である。とはいえそんな早く登校する人を生徒会の役員さん以外では見たことがない。

私がなぜそんな時間から登校しているのか。答えは簡単、家族関係が上手くいっていないからである。仕事の都合上家に居ることも少なく会話も事務的なこと以外は皆無、だだっ広い家の中に一人で居るよりはいつかは人が現れるであろう教室で過ごしているほうが気が楽という話。

「おはよう名無しちゃん」

おはようございますアラタ様と返してから彼へ会釈を続けた。嶺くんはどうやらアホサイユに何泊かしているのだと風門寺先生から訊いている。アホサイユは外見しかしらない私だがとても過ごしやすい場所なのだと想像できた。

私は熱のこもっていない暖房の上に腰掛け窓の奥に見えるまだ人の少ない登校風景を目にしている。嶺くんも暖房の隣に立って同じように窓の外を見ていた。

「いつもこうしてるよね」

こくり。首を縦に振って生徒たちの動きを見る。私は知らない校内の生徒を見ていることがどうやら好きなのかもしれない。
そういえば[いつも]とはどういった意味でしょうか。まるで私のことを見ていたとでも言うような。そう考えて先日のことを思い出した。マジマジドマジ説。確かOKHだった。どうしてあんなことをいくら小さい声だとしても言ったのだろうか。もしかしなくても私と似たようなことを皆にも言ったのだろう、そうでなくては私は困る。返答に困るし、親衛隊として話しかけるときにも困る。何より私は嶺くんに対して何の感情も持っていないのだ。ただのクラスの人気者。A4の一人でお洒落でテニスが上手な長身リーゼント。

「またまた名無しちゃん難しい顔しちゃってる」

向日葵のような笑顔!と笑う彼はやっぱりいつもと変わった様子が見当たらない。そうか。私は確信した。そして彼の言ったとおりに微笑んだ。

アラタ様と一言。勿論彼は振り返ってくれる。私は彼のことを上辺しか知らない。ちょっとの興味を先日抱いた私の胸はまだ満たされていない。あの言葉が本気にしろ冗談にしろ私はあのときの返事はこう返します。


「お友達になってくれませんか?」

私の差し出した手を彼は勿論と握り返してくれた。





ラブタイム(登校時間)
(マジマジドマジにKKD、かな?)(何ですか?)(キミの恋人への第一歩)(口説くのが得意ですよね、アラタ様って)((本気にされてない…、))

2012.3/26


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