興味を抱きましょう

放課後。沈丁花さんに用事があると言ったところ、お上品な笑みで「その用事、諦めてください」と言われたものだから潔く諦めるしかありませんでした。本当に女の子って恐い。

「きゃあああ、アラタ様ああああ!」

毎度相変わらずと言うべきかなこの罵声のような奇声のような女の子達の中に私は入ることはせずに、ただ端の方でテニス部のヒーローこと嶺くんの姿を捉えていた。

テニスウェアからラケットまで自前なんだからテニス部に入れば良かったのに。そうこの間まで思っていた私だけど新任の担任と嶺くんが話しているのを聞いてしまった時にはもう何も言わなくなったような気がする。あんなに女の子に優しくしている彼でも色々複雑な環境にお住まいのよう。特に家族関係とか、ね。

綺麗なスマッシュを決めた彼はまさしくヒーロータイムと言っても過言ではない時間を送っている。彼女達はまた喉が渇れてしまいそうな声で名を呼んでいた。私もつられるかのようにアラタ様と声を出していた時、隣の子が私にタオルを差し出した。そして思いだす。彼へタオルを差し出すのは順番が決められているということに。
今日は12回目のテニス部借りだしであるようだ。苗字の関係上12番目に嶺くんのファンクラブに名前を刻んでいる私であるのだけど、一体どのように嶺くんへと渡せばいいのでしょう。

受け取ったタオルをあまり汗を掻いていない彼のもとへ運んだ。アラタ様、と自分なりに明るい声をかけると嶺くんは相変わらず眼鏡の奥から笑顔だった。貼り付けたようなその笑い方のせいで私は彼のことが好きになれないのかもしれない。とはいえ嫌いではないと言うのも事実であり、彼への興味は全く無いことを今すぐ何方かに伝えてあげたい。

「名無しちゃん、タオルありがと。マジマジドマジにOKH!」

マジマジドマジ説を耳にしてよく分からずにクスリと笑っておく。思えば私の名前は名前で呼んでくれることを思い出した。沈丁花さんだって嶺くんからつけられたあだ名であり本来ならば違う本名があるし、担任にだってティンカーちゃん呼びである。
嶺くんが使用したタオルを受けとり「頑張ってください」との一言残してぴったり45度の礼を返せば彼は体勢を私に合わせて何かを囁いた。

内容の意味を理解する前に私の体は一歩後退していて、そそくさと逃げ帰るように私は女の子達の輪の中へと潜り込んだ。





ヒーロータイム(放課後)
((オレ、キミに惚れちゃってる!))(どさくさに紛れて告白だなんておかしいとは思わないんですか!?)

2012.3/23


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