晴天に恵まれた一日のはず。

自転車通学をしている時の難点。それは天候の気まぐれ。朝は見事喉がからっと渇くのではないかと思うほどの炎天下だったというのにお昼時から厚い雲に覆われて挙げ句の果てにどしゃ降りの雨。いつも思うのだがやめていただきたい。


放課後。帰りはどうしようかなーなんて下駄箱の前をうろちょろしていたら見覚えのある姿を発見した。沖田総司。去年一緒のクラスだった男子生徒である。彼は下駄箱の前に設置されてあった傘立てから何かを探るように一本一本取り出しては開いていた。そして何かを確信したのかひとつ頷いてオレンジ色の彼には似合わないような傘を手に外へと出た。きっと家族の誰かのものなんだろう。

「あー疲れたー。ってあれ、名無しのじゃん」

何やってんの。と声をかけてくれたのはクラスのムードメーカーこと藤堂くん。私は素直に傘を持ってきてないことを伝えれば、屈託のない笑顔で「オレの傘ん中入る?」と嬉しいことを言ってくれた。うんと頷き、私は上靴を革靴へと履き替えた。さっき沖田が漁っていた傘立てで藤堂くんは自分の傘を探し始める。一本一本、丁寧に。

数十秒たてど藤堂くんの傘が見つからなかった。ここで嫌な予感がひとつ浮かぶ。さっきの沖田の行動のことである。自分の傘を探すのにわざわざ開く必要などあったろうか。

「あの、藤堂くん。もしかしてオレンジ色の傘だったり……」

「ん。オレンジ?……あー前に無くしたのはオレンジ色だったっけな。裏地に新選組って書いてあるんだよ。んで、今日持ってきたのは盗まれたりしねーように皆とあんま変わんねー紺の傘なんだけど」

どれだったかなー…開けば分かんだけど。そう言い、彼は傘探しを再開した。オレンジ色の傘。裏地に新選組。沖田が持っていったのは藤堂くんの可能性が高いような気がする。って言っても今日の傘ではなく前の傘なわけで、今日の藤堂くんの傘がなかったら一体誰のせいになってしまうのだろうか。

「あ、あった!」

バサッと紺の傘を開いた。裏地にはでかでかと[俺の!]と白マジックで書いてある。んじゃそりゃ。君は笑いをとりたいのか。

背に腹はかえられない。なんて心中語り、通称[俺の!傘]の中に入れてもらい帰りもわざわざ送ってくれたのである。相合い傘なんて恋人要素は一切ないし、制服の右肩らから手にかけては全てがびちょびちょだし。結局干さなければならないのなら最初から走って帰ればよかったのかもしれないなんて思ったのは秘密。





雨と盗難と相合い傘
(送ってくれてありがとね)(気にすんなって!じゃあまた明日な!)(うん、バイバイ)

2012.3/12



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