『私は…、』
未だ喋り続ける女の子は私に言葉のナイフで斬りかかる。
花村の制服を握っていた手を離した。今の私は皆に見られていい元気が取り柄の私じゃない。私の過去話?なんでそんなの知ってんの?もう頭がこんがらがってきた。気持ちがぐちゃぐちゃ、止めて。もうこれ以上……、
『嘘を見抜けない人も嫌いだけど本当のことを言えない小心者の自分が本当に大っ嫌い!』
声のトーンが大きくなると共に私は胸の内がものスゴく気持ち悪く感じた。何かの虫が体内をわらわらと歩いているような気持ち悪さ。私はそれを吐き出したくて何度も止めてと呟いた。
『嫌い嫌い嫌い!自分のことを考えるだけでヘドが出そうだわ!』
彼女は一息吸い込んだ。醜く歪んだ表情の彼女は私を見て物語のお姫さまのように綺麗に微笑んだ。
『……だから考えたの。そうだ、私は消えちゃえばいいって』
彼女の声を遮るように。皆の耳に入らないように私の否定の声もどんどん大きくなっていった。
『今回無理に押しきってココに来たのも消える目的にピッタリだったから。人を捜すってことは相当迷子になりやすいってことだろうからねぇ』
そんなこと思っていない。人捜しとか人助けって一体どんなことやっているのかなって気になっただけ。そう好奇心の塊な私はだから訊いただけよ。
『そしていつも独りで泣きじゃくる場所、辰姫神社で“私”は見つけた。死にたいのなら死ねばいい。私が、やってあげるから』
私は生きたいのか死にたいのかはっきりしていない。けれど目の前の私が恐くて拒絶した。もう私の耳が機能しなければ良いのに。なんて言い訳付けて私は“私”から逃げ出した。
>立ち向かう恐怖。
(アンタなんか私じゃないっ!)(暗くなる視界に貴方の瞳)
2012.6/6
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