現れた“私”

神社を出るとそこは霧が物凄く深く、肉眼の私の目では人ひとり発見するのも不可能に近かった。
だけど一人、花村ジュネスくんを見つけることができた。あのヘッドフォンの色がうっすらと霧の中から見えたのである。

『は、はは花村ああっ!』

「どうした、何かあったのか!?」

おおきな声をだして呼ぶと反応してくれる。どうやら本当に花村のようだ。周りには天城など探索メンバーが揃っているらしく私はほっとして涙が出そうになった。

『ド、ドッペルさんが居たああああっ!』

「……は?」

『ドッペルさんだよ!ドッペルゲンガー!!見ちゃったら死んじゃうって、つか死んじゃう!?』

私の騒ぎ立てる声に知るか、んなもんといつもの呆れた声。私の心の中は幾分か落ち着いた。いつものように馬鹿でかい声をだして自分自身も私を取り戻す。

『助け求めたのに冷たいし!まじ頼りにならないイケメンだな!かっこいいぜ、悔しいけど!』

誉めてんの?けなしてんの?と青筋を立てた花村に返答しようと口をあけたとき、これまたゾクリと背筋が凍った気分になった。来たのだ。“彼女”が私を殺しに来たのだ。
咄嗟に花村の後ろに隠れる。負に満ち溢れた彼女からどうしても逃げ腰になってしまう。いつもなら大体は口先だけで負かす自信がある私だけど今日はそうとはいかなかった。

『……どうして私から逃げるの。あんたは私の手で殺してあげるのに』

『ドッペルさん来たし!しかもなんだか危ないこと言っちゃってるし!』

最後の足掻き。ドッペルゲンガーを信じてるかなんて関係ない。確かに幽霊は苦手だがそんなことも言ってられない。恐怖しか感じない今、花村の制服を掴むことしかできなかった。

「あれは…、まさか名無しのの……!」





>哀しむ瞳に絡む視線。
(外国人の知り合いなんていません!)(馬鹿言う状態じゃないけど言うしか恐怖を消せやしない)

2012.6/3



- 159 -

[*前] | [次#]

- back -
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -