「これなーんだ」
花村陽介。彼の指差す先には大きくて黒くて長方形なアレ。今や日本…いや世界各国で必須とも言えよう家電製品があった。あったのだが一見普通のソレ。一体この家電製品と人助けがどう関係するのだろうか。
『テレビ』
「……以上!オレらの人助けの一部を見せたんだから帰れ!」
『はぁ!?ちょ、まじ意味分かんないし!』
どういうこと鳴上っち!意味の分からない花村の回答を詳しく説明してもらおうと彼に詰め寄ると鳴上は、んー…と小さく考えながらテレビの前に立つ。そして彼はテレビの画面に手を添えた。
『は、』
そのままテレビの中へ手が射し込まれた。こういうこと、と薄く笑う鳴上に冷静に対応できるほど私はできた人間じゃないと吠えてやりたい。いつもの私は騒がしい声でえ、ええっ!?と声を荒げる。案の定花村に鼻と口を大きな手のひらで塞いできた。
『むぐっ』
「うるさいバカ!目立つだろーが!」
花村はそう言うがテレビ売り場の周りには私たちの他には誰もいない。ってやっぱり家にテレビがあるから買い換えることなんてそうそう無いのだろう。里中と天城が私の反応を見てウンウンと頷いてた。だって液晶画面に手が入ったってことは携帯をタッチ操作できないも同然。ってミンナが所持しているの携帯だから普通に打てばいいのね。わざわざタッチ操作しなくて良いもんね、私もだけど。
「で、中に入るのか?」
「……入るしかねーだろ。なんたってこいつ。目ェ輝いてるしなー…」
あーやだやだ。髪をがしがし掻きあげて私を見る花村に私は思いきり肯定した。だってテレビの中へ赴いて人命救助をするなんて普通じゃできないじゃない!
>2011年、主流は携帯。
(さ、中に入りましょ!行きましょ!)(だから騒ぐなって!)(花村もうるさい)(すご、吸い込まれ…うわっ!?)
2012.5/20
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