思いと



「全く……」

兄さんが部屋から出ていった。

彼女のおでこにキスをしていたことは見ていないことにしよう。僕と兄さんが同じ相手に好意を持っていることは、微妙に分かっていた。もしかしたら、教官もナナシの事が好きなのかもしれない。

七年前からずっとそうだ。僕は感情を表に表すのが苦手だと言うこと。兄さんはそのぶん、感情で、感情だけで動いているようなものだから皆に親しまられている。教官は、色々と持っている知識や何やらで皆の【教官】として動いているじゃないか。





だったら僕は?

僕はストラタ軍の小佐で、彼女の友達。
たまに兄さんとシェリアをくっつけようとするナナシの手伝いをしたことはあるが、昔以上に関わることはなくなったと言っても過言じゃない。



「ナナシ。大丈夫ですか」

汗をかいている彼女の顔や首筋をキンキンに冷えきったタオルでふいてあげると、ピクリと反応があった。

『う…ぅ………』

「………まだ起きないんですね」


教官が来るまであと少し。
この一人で独占できる彼女の唇を静かに奪い去った。


独占欲の強さ
(この気持ちに気づいてくれることを僕は望んでいる)



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