『エブリディ・ヤンライ!ジュ・ネ・ス!』
店内の音楽にあわせて歌う私を痛い子の目でみるジュネスくんを見ないフリ。そんな中、鳴上が私を微笑ましそうに見ていたのが気がかりだったわけだが、私にはそれを聞き出せるだけの勇気はなかった。
「うっせーな…ったく、なんでこうなっちまったんだか」
「なんでって花村が口を滑らしたからでしょー」
「うん、千枝の言う通り」
里中と天城は花村が悪いとの一点張りの様子。鳴上もその点においては何も反論すべきことは無いらしく花村一人が二人にイビられていた。御愁傷様というかなんと言うか。恨むなら私じゃなく私の隣の席をモロキンを恨むべきだよ。うんうん、そう頷いている姿をも鳴上は我が子を見るような目で見ていた。なんだか調子狂うなぁ、この人。
電化製品コーナーへ向かうべくエスカレーターに一段一段乗り込む中、私は天城の前で悪気も一切無く口を開いた。
『つか天城ちゃんってさー私の運命の人?』
「み、観たの!?」
『うん』
前に“マヨナカテレビ”だかを観たとき映ったの天城ちゃんだったんだけどと言えば過剰反応を返す天城。皆もそれぞれ思い当たる節があるらしく微妙な表情が視界に入った。
結構運命の人って変わるもんなのねと笑えば呆れた花村がこれまた馬鹿を見るような目を向けて人を貶し始めた。冷めた目は嫌いだけど花村の小馬鹿にする目は嫌いじゃない。
「つか運命の人捜しに何回も観るってどんだけ男に飢えてんだよ」
『飢えてるってか、噂で聞いたのよ。運命の人は一人じゃないって』
>“マヨナカテレビ”の噂。
(それで天城ちゃんは私の運命の人?)(ちょーっと待った!アタシや鳴上くん、そして花村までもが雪子を観たのよ!)(ちょっ、俺の扱いって)(じゃあ天城ちゃんは皆の運命の人ってことね!)
2012.5/19
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