それぞれの



ナナシが風邪を引いた。

ナナシといえばパーティの中でもパスカルと一を争うほどうるさい奴なのだが風邪を引くと言うことはバカではないのだろう。だって親父が言っていた。バカは風邪引かない、と。

だけど、あいつの行動は俺が思う以上にバカなんだと思う。何て言ったって敵(魔物)に真っ向に向かっていくし、平然と落とし穴にはまって笑っているし。

昔からの知り合いで七年経ったとしてもここら辺は変わらないんだな。そう思いながらも、今、荒い息をして寝ている彼女に目を向ける。時より、「うぅ……」と唸ると言うことは嫌な夢でも見ているのだろうか。

暖かい彼女の手を握ると、少しだけ表情が柔らかくなる。少しは楽になったようだ、………良かった。


「兄さん」

カチャリとドアが開くと共に入ってきたのはヒューバート。そろそろ看病の交代の時間だと気づいてしまう。

「まだ、彼女は目覚めないんですね」

「ああ」

俺は彼女を独り占めできた時間ももうないと思い、ナナシのおでこにあった熱気のこもったタオルを取り払い、かわりに一回だけのキスを送った。


結果、皆…お前が好きなんだ
(少なくとも、俺は恋愛感情として君を見ているよ)


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