仮装という言葉を単体で耳にするなら私は純粋にハロウィンパーティーを思い出す。
お菓子を貰いに街中を歩く子供たちを実際に見たことがないのはその歳くらいの知り合いが居ないからなのかもしれない。私が小学生くらいのときはハロウィンと言うべきかなんというか似たような事はした記憶はあるが仮装なんてしたことはないから羨ましく思ったり。
もう一つ、仮装で思い出すのはコスプレ。最近は人生が忙しくコミケに足を運ばなくなった私だけど結構凄かった過去を思い出した。
何かの漫画で見たような制服、何かのゲームで見たようなヒロイン、皆濃いメイクをしてカラコンを入れて「写真撮ってくださ〜い」の嵐だったのはいまでも忘れない。
んで、本題に入ると、仮装をしている人は見たことがある私だが自分が仮装するとは全くもって一ミリも考えて否んだなんだって話なわけで。
放課後、友人の千鶴がついてくるよう促してきたから何も言わずついていけば目映い光を放つイケメン集団が数人集まっていたのだから合コンかなんかの数合わせと納得したはずなのに。「はい」と手渡されたのは丁寧に畳まれた着物で、意味も分からず受けとるのまでは構わないが「着替えてきてね」と無理強いされるとは思わなかった。というか千鶴はそういう人じゃないと信じていた。
数分後。着付けなんて分からないからとりあえず適当に身にまとってみたが、寒い。つか、私も一応女なんだけど袴だし。生地が薄いせいかすーすーと風が通っていくのが分かる。ハロウィンも過ぎてそろそろ冷え始めるこんな時期に千鶴は一体なにをしたいのだろうね。どこかのスタジオらしき場所へと向かうと髪をひとつに結った千鶴が袴姿だった。
「なに、ここって男装でもしなきゃなんないの?」
「えっとね薄桜鬼っていうゲーム知ってる?」
「ごめんね」と手を合わせながらも説明をしてくれたが、ごめんよく分からないや。最近はカラオケにつぎ込んでゲームなんてやっていないことを彼女に伝えれば、「じゃあ今度貸してあげるよ」と笑ってくれた。あ、やらなきゃいけないのね。
「と、まぁ…その薄桜鬼ってやつのコスプレ会なのね」
「流石は名無しちゃん。ものわかりが早くて助かるよ!」
手を引いてさっきのイケメン集団のもとまで来た。勿論彼らも着物姿。一人は物凄くはだけていて目のやり場に困ってしまう。なんだかみんな個性的ね。流石はゲームキャラのコスプレってところか。
「ねぇ、キミ?」
くすくすと笑みを浮かべている猫目の男性は続けて「誰かに着付けてもらったら?」と私を指差した。そりゃあ滅茶苦茶だとは自分でも思ったが一人ではなんもできなかったんだ。千鶴は千鶴で別室で着替えちゃうしさ。
仮装行列。の出前。
(つか初対面の中に私を連れ込むなんて千鶴ってば私のこと嫌いなんじゃないの?)(ち、違うよ!ただ人数が足りなくて…)((ああ…人数合わせは間違ってなかったのね))
2011.11/20
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