『あとはー…、ピーチグミとグレープグミをそれぞれ五個ずつで』
「あいよ、まいどあり」
店主さんからグミを貰い、金を出す。えっと、ピーチグミが一個500ガルド、グループグミが2500ガルドだから……、15000ガルドか。多少の出費は否めないな。
「ちょっとまって下さい」
金を渡そうとした手を握られ、どうしたのかと不思議そうに彼を見てみると、
「たしか、前に行った時は50ガルド安かったはずですが」
私の手を握る方とは反対の手で眼鏡のブリッジを押さえながら店主を見据えていた。
え、うそ。あっているはずだけど。そう思うけど、ヒューバートの目が……、いや眼鏡がギラリと光ったので私は何も言えなかった。
「そうですよね、兄さん」
「ああ、俺たちが来たときはピーチグミもグレープグミも50ガルド安かったはず。そうだよな、ナナシ」
「えっ!?うん、そうだった……かも」
ごめんなさい。私、嘘をつきました。多分、私の間違いじゃ無かったはずなんです。前に私がソフィと買い出しに来たときは確かに500ガルドと2500ガルドだったはずなんです!
「そうだったかねぇ…。50ガルドずつか……。まぁ、今回はまけておくよ」
いいんですか!?とツッコミを入れてやりたかったが黙秘しておいた。いや、決して隣にいたアスベルが腕をギチギチに握っていたからじゃないよ、うん。
「よかった、ヒューバート。お前のお陰で安上がりできたよ」
「兄さんはいつも忘れますからね。値切り」
値切り!?いつもそんなことをしているの!?呆気にとられる私を放置して、二人が次々と言い出したことは……。
「よし、このお金でカレーをデュアライズできるな!」
「兄さん。今回はオムライスをデュアライズする予定でしょう」
二人とも手の中には野菜セットや卵といった材料だらけ。荷物持ちは勿論私。
………、ってちょっと待て!
『ふ、二人とも!デュアライズより荷物くらい持ってよ!!』
今回買ったものはグミだけではない。皆の武器などの装飾品も取り換えようか。と言うことで色々と買っているのだ。なのにその全てをか弱い(自称)私に押し付けるというのか、あんたらは!!
「………デュアライズより?」
今、そう言いましたよね?と言うヒューバートの視線はスゴく冷やかで。まるで私が悪いことを言ったような雰囲気で訴えられた。
「オムライスをデュアライズしないでどうやって食べろと言うのですか!良いですか!?」
オムライスを自分達で作ることがこのゲームの中では許されていないんですよ!?このゲームの中ではそう言う規定があるんです。そして何より………。
ここまで長々と喋っておいて一気に黙り込むヒューバートに『ヒューバート?』と呼ぶと、小さく…本当に小さくだが呟かれた。
「エレスポットに入れても「敵の攻撃をうけることなく戦闘が終わるから意味が無い」と言ったのは貴女でしょう」
『うっ……!』
確かに言った。確かに言ったが根にもっていたのか。
「ヒューバートの言う通りだ、ナナシ」
『ア、アスベル……』
アスベルまで何か言うつもりなんだな。もう憂鬱でしかないよ。
もう…、ヤダ……。
(オムライス10個、お願いします)(俺はカレー11個。勿論甘口で)((なんか数量聞くだけで胸焼けが………))
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