目元


席が替わって一週間が経った。新しい席に慣れた皆はそれぞれ授業を乗り越えている。私はというと、皆みたいにうまく授業を乗り越えることができなくて腕を枕がわりに目を閉じていた。

コンコン。もしくはトントン。何かを叩く音が聞こえた。誰だよ私の眠りを妨げるバカ野郎は。そう思いながら音を完全無視して本当に寝ようと努力をする。

「名無しの」

宍戸くんが私の苗字を呼んでくれた、気がした。もしかしたら夢なのかもしれない。たまにあるよね、現実なのか夢なのかあやふやでよく分からないこと。というか夢の中でも私は授業受けてんの?ちょっと自分残念すぎるわ。


ちらりと身動ぎをする振りをしながら薄く目を開け宍戸くんを盗み見た。クラスの男子の中でも一番キリッとしている瞳が私に向けられているのが見える。うわ、一瞬ドキッとした。そりゃあ彼は美形揃いの男子テニス部の一員なんだからドキッとするのは分からないでもないよね。私、男子と会話経験少ないからそんなに見られても困るっていうのが本音。

それにしても本当、男の子らしい目付き。こういう人ってやっぱりモテるんだろうなあ。って…そうだ、宍戸くんは女子と滅多なことで話さないじゃないか。

「おまえ、起きてるだろ」

『……おはよう』

いつまでも見ていたら目があった気がした。そして起こそうとしてくれた手が私の肩に触れるのを感じた。ってあれ、これ夢じゃないんだね。あらら…ちょっと嫌われちゃったかも。まあ、仲良くなることもないだろうから気にしないけどね。


次の問い、お前当たってるぞ。そう素っ気なく言われて今の現状に気づきました。





貴方の目も原因のひとつ
(目を奪われた)(なんだか皆がキャーキャー騒ぐ理由…分かるかも)

2011 9/28


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