『教官、私もソフィみたいに教官の話、聞きたい』
私のその一言で場の空気がガラッと変わった。……気がした。
一番最初に変だなぁと思ったのはシェリア。ガシッと私の両肩を掴み、真剣に首を振った。勿論、横に。
「だ、駄目よ!ナナシに変なことを吹き込まないであげてください、教官!!」
「い、いや…、俺はまだ何も……」
言っていないのだが。そう続けていう教官の声と被ったのはアスベルの珍しく焦ったような声。
「ま、まさか教官は、ツインテール萌えがあったんじゃあ!?」
も、萌え?萌えってなんだろうと思いながらも、結ってある自分の髪を弄る。そう、今日はシェリアに髪を弄られてソフィと同じようにされたのだ。ソフィほど、髪の毛がのびてはいないからセーラー○ーンのようになることはなかったのだが。
そうだなぁ…、強いていうなら、「月夜ばかりと思うなよ」で有名な女の子とおんなじ位の髪の長さだろうか。
「まったく……、ナナシ。あなたもなんでマリクさんの話を聞きたいんですか」
貴女だって一応、一応はもう大人の部類でしょう。と眼鏡のブリッジを中指で押さえながら此方を見据えるヒューバートの方を振り向き、私は笑顔で答えた。
「私、ソフィから聞いたよ?教官の話は為になるって」
「へぇ〜、教官の話って為になるんだぁ。私も聞いてみたいな〜」
じゃあパスカルも一緒に教官の話を聞こうよ。そう言うと、教官が首を横に振った。
「残念だが二人とも。俺の話は毎晩一人にしか聞かせてあげられないんだ」
だから諦めてくれ。ポンポンと宥めるかのように私の頭とパスカルの頭を撫でるが、納得いくはずもない。
『じゃあ教官。今日は私に、明日はパスカルに聞かせてくれるよね?』
「おっ、いいねぇ。きょーかんっ!それで頼むよ〜!!」
勝手に話を進めていく私たちを見ながら、教官は困ったように辺りに視線をさ迷わせた。………らしい。(後日談)
「自業自得ですね」とヒューバート。
「教官っ、くれぐれも変なことを吹き込まないでくださいね!」とシェリア。
「ま、まさか!明日はパスカルもツインテールを……!」と検討違いなことを言い出しているアスベルたちを順々に見て、ため息を吐いた。
「教官」
ソフィが首を傾げながら、教官の服を引っ張る。
「どうした、ソフィ」
あ〜!!ソフィが教官に触ってる〜!私も触りたい!!と叫ぶパスカルを余所に、ソフィと同じ目線くらいの位置まで屈むと、小さくあることを呟かれた。
(薄々とは気づいていたが、まさか本当にそうだったとはな)
その時教官はソフィの話を聞いて微笑んでいたんだって。
「ナナシ」
『はい、なんですか?』
ニコニコと振り向く私に教官はこう言った。
「今夜、俺の部屋でな」
((ナナシ、教官のことが好きなんだよ))(その言葉のお陰だったりもするがな)
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