病院なんてつまらない。まっしろい空間は私を楽しませてくれる欠片もみせてはくれない。だから私は逃げ出した。ごめんモモシロくん。安静にしてろ、なんて私には無理だったみたいだ。点滴をはずして棚にしまわれていた制服を持ち出して部屋を出た。
タイムリミットはもう少し
さっそくトイレへ行き、着替えをしはじめる。はやく。でないと皆に捜されてしまう。長生きしても意味がないんだ。何もかもを捨ててしまった私がこれ以上生きていても意味はない。親も友達も皆捨てた。本当に何もない。唯一の気がかりは…モモシロくん。
『…うしっ!』
着ていたパジャマはトイレに放置。どうせ誰かが拾ってくれるでしょ。なんて適当に考えをまとめ、私は女子トイレから静かにでた。何も知らない素振りをしながら。
『とは言えどこに行けばいいのやら』
学校に入るのはいいんだけど万が一モモシロくんに出会ったらってことを考えるとちょっとためらう気持ちもあったり。適当にふらついていると色んな人の視線が突き刺さった。そりゃそうだろう。見た目ピンピンしている中学生がぶらりぶらりと歩いているんだから。
『あ、ここは……』
小学生の時によく遊びに来ていた公園。ここで友達と色々遊んでいたのが懐かしい。今となっては小さくなったブランコに座ってみた。今と昔とでは見える景色が違う。身長が伸びたこともあるだろうし、メンタル面のなにかも関係してるんだと思う。
キーコーキーコーとブランコが軋む。ゆったりと動くその感覚が吐き気をもたらしたので近くベンチへと移動した。
『おえ……、』
気持ち悪い。久しぶりに酔った。いや、本当に酔ったんだろうか。これが死に一歩近づいたとしたのならどうなんだろう。
私は死にたいのか。
はたして死にたくないのか。
『諦めはついていたはずなんだ』
諦めろ。生きるという希望を持つな。結局生きることができたとしてもそれも数日数ヶ月。いいとこ数年だろう。皆は何十年。結婚して子供を産んで、年金生活をして。充実してから人生を絶つんだ。私とは違う。
『諦めなきゃと思うのに……、』
どうしてこうも諦められない私がいるんだろうね。
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