目を開けたら息がこもって暖かい感覚が口許からした。それもそのはず、呼吸器があてられていたんだから。天井が白くて、腕には点滴がつけられていてベッドに寝かされていて、ああ、病院ね。なんて思ってしまった私の右手が暖かったことに気づいたのはそう遅くはなかった。
気がついたら嫌いな場所
『モモシロ…くん…?』
なんで彼がここにいるんでしょう。いや本音をいえば嬉しいとは思うけれど…あれえ?窓から光が降り注いでいるのだから今は日中。今日が何曜なのかは分からないけどこの人学校は大丈夫なんだろうか。テニス部は大丈夫なんだろうか。
本人は自分の手を握ったまま眠っていた。
『もしかして…ね、』
付きっきりで看病してくれた。とか言う話だったら私、期待しちゃうよ。期待しても、その感情をぶち壊すことしかできない自分を呪いたいんだけどね。
「ん…あ、」
モモシロくんが目をうっすらと開けた。『おはよう』と声にのせたが聞き取ってもらえただろうか。あ、聞き取ってもらえたようだ。寝ぼけ眼がおもいっきり開眼されたのだから目は覚めたんだろう。
「お、おま、大丈夫なのかよ…!」
大丈夫なわけがない。大丈夫なら病院なんかにいるはずがないのに。だけどここで否定の言葉をはなったならお節介なモモシロくんは私を心配してくれることなんだろう。こくんと頷けばモモシロくんは大きく溜め込んでいたものを吐き出した。はー、と。暖かい彼の手はいまだ握ったまま。心配。してくれたんだと思う。彼の表情が私の友達だった人の心配してくれたときにみせるそれに近かったからそう思うことができた。
『…なんで、』
「お前、なんで血なんて吐いてんだよ。誰かにいじめられたからとかじゃねえだろ?」
『………、言えるわけないじゃない』
だってあなた心配してくれるでしょう?と付け加えたくなった。
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