私も好き




さてさて一体、これはどういう状況?



『あ、あれ。……、ゼロス?』

「はいはい、どうしたのよ、ハニー?」

『どうしたのよ、じゃなくて何で朝っぱらから隣にいるのよ』

何と目覚めの悪いことか。
動きがとれないことを不思議に思って目を開けたら一面は赤。鼻を擽るその髪が気になって気になって仕方がない。

気だるいという気持ちを抑えて身動きのとれない身体をくねらせる。途中、「お前、誘ってんの?」と意味の不明な事を言われたが私にはよく意味が分からなかった。

「朝からいる理由は何となく。なんかさぁ…、ハニーの顔が見たくなったんだよな〜」

『あ、そ、顔が見れたならいいでしょ。早く離れて』

「嫌って言ったら?」

『そしたら、何らかの術でもぶっぱなしてあげるから安心して』

ひぃ〜、怖いねぇ。俺さま、ナナシに殺されちゃうんだなー。とにかにか笑う彼が私なんかを襲うはずがない。なんてったって、ウチら二人は喧嘩友達だから。身分は違うし、戦い方も何もかも……。二人が一緒に気を合わせることなどできないのだ。


「でもよ…、少し位は気をつけていたほうがいいぜ?」

そういって指をさす先は、


『ん、……あっ!』

「谷間、そんなの見せられて興奮しねぇ男は居ねぇってなぁ?」

そうだ。確か昨夜は湿気がじめじめとしていてパジャマのボタンを数ヶ所外したんだった。勿論私が覚えているはずもない。なんせ、寝ぼけながらやったんだから。

『ちょっ……あんま見ないでよ!しいなにチクるぞ!!』

手をぶんぶんと振り、谷間に向いてるゼロスの視線をずらした。その表情は見開き、固まっていて。何をそんなに驚く必要がある?そう思いながら首を捻るとゼロスが珍しく戸惑いながら口を開いた。

「あー……、もしかしてさ。お前、俺さまとしいなが付き合ってるとか思ってる?」

『はぁ?「思ってる?」じゃ無いでしょ。前にアンタと行動を共にしてた……えーっと、茶色い頭がツンツンしていて変なビロビロをつけてる男の子から聞いたんだから』

そう言うと、小さくロイド君か……。と顔をしかめて呟いていた。おいおーい。せっかくの美形が台無しだぞ。

『つか早く退いてよ。朝から喧嘩はしたく無いんだからさ』

しかも此処は私の部屋だ。
暴れるには狭い。いや、そうじゃない。色々破壊してしまう危険性があるではないか。



だが、彼から返ってきたものは私が予想していたものとは違った。

「イヤだ、どかねぇ」

『は、……はぁ?』

いつになく、あの飄々とした表情を見せないまま……、そうだなぁ。無表情とでも言えばいいのだろうか。そんな目付きで見られたら驚くことしかできない。


だって、こんなゼロス知らないもん。


『ゼ、ゼロス……ぅんっ!?』

どうしたのさ。そう聞こうと口を開いたとき、何かが口の中に入った。いや、何が入ったのかなんて一目瞭然。何てったって唇と唇が触れているのだから入っているのは舌だろう。

ゼロスの舌が私の舌に絡み付く。何て言うか気持ち悪い。これがディープキスというものならばなるべくならやりたくないものだ。

『んっ…ふ、ぅ』

思えば息をする暇が無い。
人間とは厄介で気がつけばどんどん苦しくなる。こういうときはどうやって知らせればいいのだろう。舌でもかじってやったら離してくれるだろうか。いや、後が怖くなるだけだな。

とにもかくにも、苦しくなって朦朧としてきた意識の中、ゼロスの胸板辺りだろうか。そこを叩いてやった。

そうしたら絡んでいた舌が離れ、自分の欲しがっていたはずの酸素が一気に取り込まれる。あれだ、全力で走った後のどっと出る疲れのような感じ。

『はぁっ…はぁっ、なにすんのよ!』

「何ってキス?」

いや、そんなのはわかってるっつの!そうじゃなくて………。何で私なんかとキスしてんのよ、しいなとしなさい!お似合いよ!!そう言ってやるとガックリとした表情。

「あのね、ハニー。俺さま…しいなとは別にそんな関係じゃないわけよ」

『………じゃああの金髪の娘?』

「あのこは近くにボディーガード的な野郎がいるから手なんてださねぇよ」

『えっと、んじゃ銀髪の女性は?何か知的美人じゃね?』

「あー…リフィル先生はダメだ」

『何で』

「抱きつこうとしたらなんかどっかの遺跡の物品を割っちまって、それから話してない」

『バカだな』

「うっせ。ちなみに俺さま、幼女は恋人範囲に入らないかんな」

『むっ……』

なぜ、次に『ツインテールの小さい娘は?』と聞こうとしたことがばれたのだろうか。

「ナナシ。まだ気づかねぇの?」

『何にさ』

「まだ聞いてない奴がいるだろ?」

誰だ。ゼロスと共に旅をしている女性は言ったはずだ。まさか、大穴で男性とか?いやいやいや、流石のゼロスでも………、ありそう。

『アンタ、男好きとかじゃないよね?』

「バッ、バッカじゃねぇの!?さすがにねえって!」

違ったようだ。あの心底驚いたような目からして嘘は言っていないだろう。よかった、そこまでいってたら一発元通りに治すために殴り倒すところだった。

『じゃあ誰なのさ?』

「ん?………わかんねぇの?」

じゃあヒントやるよ。と言って人差し指を私に向ける。なんだ、なんだ?指から何かが発射されんのか?
いまだに小首を傾げるとため息ながらに、こい囁かれた。



俺さま、お前のことが好きなんだけど
(は、はああぁぁっ!?嘘だ!)(嘘じゃねぇって。マ・ジ・で。)(そうやって何人もの女性を口説いてきたんでしょ!?信じらんないっつの!)(信じろって。んで、返事は?)(わ、私は………)
2010.07.04


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