『でも、あなたは嫌いじゃないかも』
好きとは口が割けても言えない。言っちゃいけない。あと72時間くらいしたら死んでしまうんだから。だから私が言えるのはここまでが限度だった。
濡れ女は封印して
なにも知らぬ顔で自分は家を出た。周りの同じ制服を来たみんなは急いでいるが私は授業をうける気がない。よって、のんびりしていても欠席扱いされてもなんら関わりない。
机の上にどんな悪戯がかかれていたとしても、椅子の上に画鋲が置かれていようともどうでもいいことだ。
「おい、濡れ女!」
濡れ女。昨日も大声で呼ばれたのだが、ちょっとやめていただけないだろうか。おかげで周りの学生やコートを来た大人たちがこっちを振り向いたじゃないか。目立つことはなるべくしたくないというのに。
『名無しの』
とりあえず苗字だけでも名乗っておこう。死ぬ間際まで濡れ女扱いされたら三途の川に落っこちてしまうだろう。たちの悪い嫌がらせだ。
「名無しの?」
意味が分かっていないのか、自転車をわざわざ止めてまで聞き返した。こんなところで止まってしまったら遅刻するんじゃないだろうか。
『私の名前』
言って私は歩きだす。モモシロくんが目を輝かせて笑ったのでちょっと幸せ気分を味わえた気がした。死ぬ前のお土産だろうか。なんて…ね。
「乗れよ!」
モモシロくんは自転車で私の動きを遮断した。優しすぎる彼に私は困ったように笑う。構わなくていいのになんて思う半分、構ってくれて嬉しいなあとも思ってしまう自分が腹立たしい。
でも、いつか決別しなきゃね。
『じゃあ乗せてもらおうかな』
今だけ、今だけあなたに甘えさせてください。
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