あたたかった。まぶしかった。あー…これはなんだろう。太陽?私もをあたためてほしい。溶け込んで太陽の黒点の一部にでもなれたらいいのに。まぶしかった根源を抱き止めるようにしたら耳元でなんだかうるさい声が聞こえた。ああ、うるさい!
私の領域に入り込む君
『ご、ごめん』
目の前にはモモシロくん。騒いでいたなにかに向けて目覚まし時計を叩き壊す勢いで腕を振り下ろしたのだが、その騒いでいたものがモモシロくんだったなんて予想などしない。涙ぐんでいる彼にむかっておろおろする自分。
らしくない。らしくないけど、なんだか楽しい。涙をほろりと流しているこの人がかわいく見えた。
「ってー…な、いってーよ」
頭をさすりながらその場にしゃがみこんでいたモモシロくんのもとには無数のパンの袋が。携帯で今の時間を確認すると一時十三分と表示される。結構な時間を寝て過ごしていたようだ。
教室によらないでそのまま屋上来た自分は持ってきていたバッグから弁当を取り出して『いただきます』と手をあわせた。
「おまっ、勝手に弁当食ってんじゃねーよ!」
別に関係ないじゃない。と言えばそれまでなのだが、殴ってしまったこともある。私はおとなしく彼のいる場所まで寄っていき、悶えていた彼の目の前に腰を下ろした。
『じゃあ食べよう?』
とはいっても私は弁当、彼はパンを何個か。彼がパンの袋を開けると同時に自分は弁当の唐揚げをつついた。口の中に入れると柔らかい感触と鳥の肉の味。味わって噛み締めているとまっすぐと自分を見つめていた彼がいた。なんだろう。
「なんでアンタいじめられてんの」
疑問系ではないその言葉の返答をするのは安易じゃなかった。
なんで?なんでと言われても困る。返答につまる。いじめられるように仕込みました。あと三日くらいで死んでしまうから。みんなが悲しむ顔を見たくないから。
言ってどうなる。アンタに言ったら私を救うことはできますか。できるわけないじゃない。
『人間が嫌いだから』
自分も、なんも言わなかった人たちも嫌い…嫌いなんだよ。
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