安全性の欠片もない屋上で

今日も授業は受けないつもりだ。だって今日は最後の火曜日。なんでそんな時に先生の意味の不明な説明を聞いて意味の不明な羅列を板書しなくてはならないのだ。というわけで壊れた南京錠を取り去り屋上へとやって来た。





安全性の欠片もない屋上で





空は清々しく晴れていた。今にも自分を天へと迎え入れてくれるような気がした。なんて悟っても自分の鼓動は鳴りっぱなしなのだが。屋上から飛び降りたらどうなるんだろう。そんなことを思って目を閉じた。高笑いする友達だった人たち。クラスメイト。先生。次々と出てくる人たちは感情を浮かべることなく私の死体を覗き込んでいる。興味津々に。「あー死んじゃったんだー」的な視線をおくって、自分から離れた。
そんな想像をして、飛び降りる気はなくなった。ニュース沙汰になったら皆の高校進学に響いてしまうかもしれない。

死ぬ間際ってどうしても自分のことより他人のことを考えてしまいたくなる。お節介なのかもしれない。あ、お節介といったらモモシロくんだ。あの人は明るくムードメーカー的存在に付け加えてのお節介だ。ジャージのこととか、パンをくれたりとか。

『餌付けかっての』

フハッと笑う。誰もいない空間で空を独り占めできるのは嬉しい。ひゅうっと風が吹くのも気持ちいい。こんどモモシロくんにコロッケパン代のお金を返しておこう。借り貸し帳消し。人との関係も帳消し。すべては横にまっすぐ延びる線のように。

下の方が騒がしくなっていた。覗くようにみるとグラウンドで男子がサッカーをしているようだった。元気だなーなんて思うのはきっと自分が元気なみんなに憧れているから。自分は萎れる寸前の花だから。


『あー…なんで私が死ななきゃなんないの…』

なおらないの?なおってよ。お父さんお母さん、なんで私なんかを産んでしまったの?なんで自分だけが悲しまなきゃいけないのよ。

崩れるようにその場に座り込む。私は目を閉じてぽろぽろと何もかもをこぼした。





『だれか…助けて…』
そのまま私はその場で眠ってしまった。


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