『豪炎寺』
「どうした?」
『……いや、別に』
そう言ってそっぽ向く名無し。その耳は真っ赤で、やっぱり可愛いとか思ってしまう俺はきっと健全で。数分前から握りあっている手の体温が心地よい。ぎゅうっと強く握ると名無しも握り返してくれる。勿論顔はこっちを向いてくれないのだが。
「名無し」
『何、豪炎寺』
「こっちを振り向いてくれないか」
『いや』
「なんで?」
『なんでって……』
モゴモゴと続きを呟くが俺には聞こえない。いや、俺は聞かない。もっと大きな声で言ってほしいだなんて、俺もとうとうシスコンを卒業できるのかもしれないな。
「聞こえないな。もう一度」
『なぁっ……!だからっ…その、か…顔が真っ赤だから見せらんないしって言ったの!!』
「俺は見たいけどな」
声だけでなく、今の名無しの顔が見たい。それは彼氏として当たり前だと俺は思う。豪炎寺が見たくても私は見せたくないもん。だからダメ。と言い張り、未だにそっぽを向く彼女の頬に一つキスをしてやった。
コレは君を振り向かせる魔法
(なっ、……ななな!豪炎寺!!)(お前、もしかしてキスされるのが好きなのか?)(そんなわけないじゃん!)(だが、いつもコレをしてやると振り向くだろう。な、名無し?)(もう、知らない!)
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