次の日、今日もお花のお手入れとご飯のため中庭に向かう。
もう日課になってるし雨の日以外は教室にいないので友達も行ってらっしゃいと声をかけてくれる。
中庭に出て土を見ると結構乾いていたので今日は先に水をあげようと、お弁当を置いて水を撒いていると、私を呼ぶ声が聞こえる。
「名前!よかった、見つけた」
「昨日の、えっと竈門くんと我妻くん…」
嬉しそうに手を振りながら近づいてきたのは竈門くんと我妻くんだった。
なんでも私を訪ねてクラスに行ったらここにいると教えてもらい、わざわざ来てくれたそうだ。
竈門くんはにっこり笑って私に紙袋を差し出す。
「昨日のお礼もかねてうちのパン持ってきたんだ!一緒に食べないか?」
「え、でもお弁当持ってて…」
「…そうか」
私がそう言うと分かりやすく落ち込む竈門くん。
私はそんな竈門くんを見て、申し訳なくなり、私のお弁当を拾って差し出す。
「あ、あの!じゃあこれ、代わりに食べてください!こっち食べたいです!」
私がそう言うときょとんとした顔をしながらお弁当を受け取る竈門くん。
「いいのか?」
「私の手作りで、抵抗ないなら…」
私がそう言うと今まで黙っていた我妻くんがぴくっと反応した。
「手作りなのか!いや、ありがたく受け取るよ、ありがとう」
ここで一緒に食べよう、と言ってくれた竈門くんに少しだけ待ってもらって水を撒き終えて片付ける。
「すみません…!お待たせしました」
「いや、気にしないでくれ」
そう言って私は竈門くんの隣に座って先程もらったパンを一口かじる。
ほのかにバターの香りがして、とてもおいしい。
「美味しい…」
「よかった、それ今日の朝焼いて来たんだ」
お、名前のお弁当も美味しい、と食べてくれる竈門くんに少しだけ照れる私。
誰かに食べてもらうように作ったものじゃないから恥ずかしいのだけれど、美味しそうに食べてくれる竈門くんに少しだけ笑っておく。
そんな私たちを見ていた我妻くんが口を開く。
「さっきから黙って聞いてたらさぁ?なんかいい雰囲気ですね」
「何を言ってるんだ善逸」
「俺も名前ちゃんの作ったお弁当食べてぇわ!」
ギャーギャー言う我妻くんに困っている竈門くん。
「あの、竈門くんがよければ別に我妻くんも食べてください、そんなに量がないですけど…」
「え、いいの!?」
そう言うと我妻くんは嬉しそうに顔を輝かせてお弁当からおかずを摘む。
「うっま!いい奥さんになれるよ〜名前ちゃん!」
「いえいえ!そんな、あまり物なので…」
ブンブンと手を横に振る。
こうして中庭で誰かとご飯を食べるのは初めてだったし、気さくに話しかけてくれる竈門くんと我妻くんのおかげでとても楽しい。
「そうだ、またここに来てもいいか?」
「はい、ぜひ」
私がそう言うと竈門くんはにっこり笑った。
それから、基本的には竈門くんと我妻くん、たまに竈門くんの妹だと言う禰豆子ちゃんとご飯を食べるようになった。
新作の味見をして欲しい、と言われることも増えてきて喜んで食べたし、ちゃんと感想も言えば嬉しそうに参考になった!と笑う竈門くん。
我妻くんはこれは何のお花?と花の事を聞いてくるから1つずつ説明したこともあった。
「あ、ごめんなさい!私ばっかり話しちゃって…」
「ううん、大丈夫だよ。これ、きれいだね」
「…はい、私が一番好きな花です」
私がそう言うと、そっかと何故か嬉しそうに笑う我妻くんに私は一瞬胸がギュッとなるのを感じる。
我妻くんは私を見ながら大丈夫?と声をかけてくる。
「え、あ、うん大丈夫…」
「そう?なんか苦しそうな音がしたから」
そう言いつつこっちの花は?と声をかけてくる我妻くんに私はまた説明するのだった。