あれから、すごい勢いで善逸の家のピンポンが鳴るから何かと思えばお姉ちゃんがにやにやしながら善逸を見ていて、善逸が顔を赤くしながらまた明日!と叫んでから別れたのだけど。
お風呂やご飯を一通り済ませて、今日も善逸と窓越しに話しているんだけど、突然私の部屋のドアが開く。
「何してんの!?」
「うわあああああ!!」
私ではなく何故か悲鳴を上げる善逸。
私はちなみにびっくりして体が少し跳ねただけだった。
お姉ちゃんは善逸を見てにやにやしながら近づいてくる。
「はっはーん、あんたたち、こんな時間でも相瀬…」
「誤解しないで!?」
お姉ちゃんの登場に私は何も喋らないのに慌てたように喋る善逸。
まぁ私はお姉ちゃんがいきなり部屋に入ってくるのも慣れてるから当たり前なのだが。
「私も混ぜてよ」
そう言って私の隣に座るお姉ちゃん。
服装を見れば今からバイトに行きます、って格好をしている。
おそらく少し時間が余って私たちの声が聞こえたからからかってやろうと思って来たって感じだろうか。
私はため息をつきながらお姉ちゃんに話を振る。
「お姉ちゃんの最近とか?」
私がそう言うとお姉ちゃんは少し考えてから手を打った。
「ああ!そういえばあんたの兄貴借りたわ」
「へ?」
きょとんとしながら善逸が私のお姉ちゃんを見る。
お姉ちゃんがけらけらと笑いながら詳しく説明してくれる。
「最近ストーカー行為あっててさ、仕方ないからめいいっぱいおしゃれして先週、檜岳に隣歩いてもらったのよ」
私と善逸はそれを聞いて目を見開く。
「先週…」
先週、確かに檜岳と女の人が隣を歩いているのを見た。
「え、待ってあれ彼女じゃない…?」
私は実の姉に気付かなかったのだろうか。
多分、檜岳が女の人と笑みを浮かべながら歩いている事実で私はよく見ていなかったのかもしれない。
確かにお姉ちゃんと檜岳は昔から善逸を弄り倒していて仲良くしていたから檜岳が笑っていてもおかしくはない。
私たちの反応に首を傾げるお姉ちゃん。
「?檜岳に彼女はいないって言ってたわよ」
私はそれを聞いてどこか安心したような、寂しいような、何とも言い難い気持ちになる。
私は善逸が好きで、檜岳のことは好きだけど憧れだったのだと気づいたはずなのに。
「あ、仕事遅れちゃう!じゃあね!」
時間を見たお姉ちゃんがバタバタと部屋を出ていく。
「……」
「……」
お互い無言になって、何を話したらいいのかわからない。
「…名前」
「ん?」
控えめに私に声をかける善逸。
少しだけ気まずそうに笑いながら善逸は言った。
「今日は寝ようか」
「…そうだね」
多分このまま話そうとしてもさっきのお姉ちゃんの話のせいで何も頭に入ってきそうにない。
善逸も今混乱してるだろうから一人で考える時間も必要だろう。
「明日もまた、迎えに行くから」
おやすみ、そう言って寂しそうに笑いながら窓を閉める善逸に私はチクリと胸が痛んだ。
私も窓を閉めてベッドに寝転ぶ。
「…もう、この状態で待たせたらだめだ」
きっと優しい善逸は私から離れようと考えていると思うから。
「私が本当に一緒にいたいのは、」
善逸だと、きちんと伝えよう。
ドキドキと大きく音を立てる心臓に、落ち着かせるために私は深呼吸をする。
告白って、こんなに勇気がいるものなんだな、なんてしみじみと思った。