ご飯も食べ終わって名前がはにかむように笑いながら俺の肩に頭を乗せてくるから可愛すぎて死にそうになっている俺。
ふと、殺気のような怨念のような音を感じてチラリと屋上の扉を見れば野郎どもがこっちを見ていて俺はすぐさま目線を逸らす。
いやいやいや!?この光景みられるのはまずいのでは!?
「くそが…我妻…」
「絶対許さねぇ…」
ぶつぶつと聞こえるその声に俺は名前がそばにいなくなったらそのうち吊るされるのではないかと本気で考える。
そんな俺のことなんかお構いなく名前はじっと俺を見る。
「善逸」
「何?」
もじもじと少しだけ恥ずかしそうにする彼女は可愛いんだけど、俺は今板挟み状態で静かにこの名前を堪能できないのが悔しい。
「キスしてほしいなぁ」
「え、」
いやいやいや、名前さん俺殺されちゃうよ?まじで。
「誰もいないし、だめ?」
「え、っと…」
ジッとこっちを見上げる名前に俺はグッと言葉を詰まらせる。
俺は耳がいいから聞こえるだけで名前はきっとこの声は聞こえてないんだろう。
「嫌なら、いいんだけど」
そう言って少しだけ落ち込んでいる名前に俺は耐えられなくて。
もう俺は死んでもいいか、なんて思いながら野郎どもが見ている中で名前の顎をぐいっと上に上げて軽くキスをする。
「…嫌じゃないよ」
名前が赤くなってこっちを見ている中、おそらく固まっている野郎ども。
一瞬何も聞こえなくなったと思った次の瞬間、扉が勢いよく開いた。
「我妻アアアッ!」
こっちを攻めてくるように叫ぶから俺も対抗して叫ぶ。
「仕方ないじゃん!彼女の可愛い我が儘を聞かない男っている!?」
しかもこんな可愛い我が儘聞かない奴絶対いないだろ、そう思いながら言えば少し静まり返るそいつら。
「彼女だと…?」
サヨナラ俺、できればもう少し平穏な生活贈りたかったけど名前とこうして過ごせてよかったか…。
そんなことを思っていたら静かに名前が呟く。
「…誰。なんでいるの」
そりゃ名前からしたらいきなり入ってきた知らない男たちだもんな、クラスメイトだけど。
いつもの不愛想な顔に戻る名前。
「…善逸との時間を邪魔しないで」
さらりと名前がそう言うと爆散する男たち。
名前はゆっくりと立ち上がって俺を引っ張る。
「行こう」
「あ、うん…」
あのまま捨て置いていいのか…と思いながらも名前が少しだけ楽しそうにこっちを見て笑う。
「…デート、楽しみにしてる」
ああ、俺はまだ死んだらいけないや。
名前のこと幸せにしないと。
「任せといて」
そう言って笑う俺。
嬉しそうに、でも少しだけ恥ずかしそうにはにかむ名前に俺はドキッと胸が鳴った。