やっとお昼だー!と、みんながお弁当を出す。
教科書を片付けていれば炭治郎がジッとこっちを見ながら話しかけてくる。
「なぁ、善逸」
「んあ?」
真剣そうにこっちを見ていて、俺は思わず首を傾げる。
炭治郎も同じように首を傾げながら聞いてくる。
「なんで善逸から名前と同じシャンプーの匂いがするんだ?」
「は…」
カチンと固まる俺とピクリと反応する野郎ども。
炭治郎は何も気にしていないのか、そのまま声をかけてくる。
「朝からずっと思ってたんだが」
「ちょ、ちょっと声のボリューム下げような炭治郎」
俺がそう言っても炭治郎は意味が分かってないのか、首を傾げる。
周りの野郎どもが完全にこっちを見ていて俺は背中に突き刺さる視線に冷や汗が止まらない。
「なんか心なしか善逸からは幸せな匂いもするし…」
「一回黙ろうか!」
なに!?そんな滲み出てんの俺!
恥ずかしすぎんか、いや事実幸せみたいなもんなんだけど!
炭治郎と話していたら炭治郎の後ろから顔を出す名前。
「善逸」
可愛いなぁ、じゃなくて!
「え、あ、何!?」
俺がそう言うとスッと渡してきた袋を俺は意味も分からず渡してくる。
「お弁当」
ああ、朝作ってくれるって言ってたやつか…。
俺はお弁当を見つめる。
「お弁当…?」
後ろから聞こえる怨念の籠ったようなその声に俺は顔を上げて名前を見る。
「あ、ありがとね!?」
「一緒に食べないの?」
首を傾げながらこっちを見る名前。
「ぅえ!?でもほら、名前が…」
「名前…?」
確かに前までは名字だったもんな!忘れてたわ!
もう何言ってもダメな気がして俺は口を紡ぐ。
「?付き合ってるんだから一緒に食べるくらい普通じゃないの」
「つ、付き合…!?」
名前の声と野郎どもの声が聞こえる。
終わったな、なんて思っていたらそのまま野郎に囲まれる俺。
「おいどういうことだよ我妻」
「一緒に見守り隊するって」
「抜け駆けかてめぇ」
「ち、違うから!」
わたわたと手を振って否定する俺に、聞く耳を持ってもらえずがくがくする俺。
どうしたらいいんだマジでいや、昼ご飯食えるかなこれ殺されないかな。
そう思っていたら名前がぼそりと呟く。
「…私が用があるの善逸だけなんだけど」
名前の一言にさっと静かに去っていく野郎ども。
いや、いまだに睨みつけてて怖すぎるんだけど。
「苗字さん…ようやく仲良くできる人見つけたんだな…」
すこししみじみしてる炭治郎には悪いけど、どうか後で味方になってくれと心から願うのだった。