私の個性≠ェ発現したのは4歳の時で、母に叩かれた時だった。
いや、叩かれたと言うのは間違いか。
実際、私は痛みを感じなかったのだから。
母は気味悪がってますます手を上げたけど、私は一向に痛みを感じる事はなかった。
母の個性≠ナはない。
では父の…?
父は私が産まれる前に亡くなってしまったために確認する事が出来なかった。
そして、母と母が連れ込んで来た男はこれなら怪我もしないし好都合だと私で憂さ晴らしをするようになった。
私は相変わらず痛みを感じなかったし、当然怪我もしない。
何か不審に思ったのか、人が家に訪ねて来た事もあったけど、母の様子や怪我のない私を見てすぐに帰っていった。
人が訪ねて来た日は母と母が連れ込んで来た男は不機嫌になり、暴力が酷くなる。
まぁ、私は怪我をしないから暴力と言っていいのかも微妙なのだが。
痛みを感じる事が出来ず、母からは邪魔だと言われ、いつからか自分の存在がわからなくなった。
しかし、そんな日々は突然終わりを告げる。
小学6年の時だった。
「アンタがいなけりゃ私は……!」
母が連れ込んで来た男は浮気をしていたらしい。
それを私が、子供がいるからだと思った母は、私に向って花瓶を振り下ろした。
「ーーーーっ」
さすがにこれはヤバイと思って、身体を丸めて強く目を閉じる。
でも、やはり私は痛みを感じる事はなかった。
ガラスが割れる派手な音。
そして、母の悲鳴。
何が起こったのかわからず、ゆっくりと身体を起こしながら目を開ける。
そこには、倒れた母と散らばるガラスの破片。
「………?」
わけがわからずに呆然としていたら、母がゆらりと立ち上がった。
「………ふざけんじゃないわよ…」
今度は包丁を握っていた。
「ーーーーっ」
慌てて外に飛び出した。
「………待ちなさいよ!」
母は包丁片手に追ってくる。
「……けて、」
裸足のまま走る。
「………助けて……も、やだっ……」
小さな声で呟いた言葉。
きっと誰にも届かない。
そう、思ってた。
「ミョウジさん?!」
崩れそうな私を受け止めてくれたのは、クラスメイトの男の子。