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刀剣男士は歩み寄る










その審神者は人付き合いが苦手である。

苦手故に刀剣男士達とのコミュニケーションを諦め、一人で出陣。
気付いてくれ、手伝ってくれる者達もいた。
彼らに礼をしたくて、また一人で出陣。

初めて手に入れた己の刀に自分の気持ちを吐き出し、帰路に着く。







「主はん、まずは手当てやな」

「………ん」

怪我をしている審神者を背負いながら、明石は門をくぐる。

「手当てはどないするんです?」

「大丈夫……自分で、出来るから…」

「そら残念やわ」

「え?」

「なんでもあらしません」

地を踏み締めながら、ゆっくりと本丸へと近づいていく。



「主はんの部屋どこです?」

「いい、自分で…」

「ダメや」

「………奥」

「はいはい」

審神者の話を聞いてからというもの、明石はやたらと彼女にかまう。
自分で歩いて帰ろうとしたところ、無理やりに背負われた時は驚いた。


やる気ないのが売りだったのでは…?


審神者は背負われながらそんな事を考えていた。







そして、厨の前を通りかかった時―――――

「え、誰?!」

燭台切光忠に見付かった。










「ごっごめんねぇぇぇぇええ!!」

明石から話を聞いた燭台切は崩れ落ちた。

「女の子にここまでさせてたなんて、僕はなんてかっこ悪いんだっ!」

それも大号泣で。

「自分やなくて主はんにちゃんと謝って下さい」

「もちろんです。女性が戦場に立つ等……っ」

いつの間にか、通りすがりの一期一振が混ざっていた。
ちなみに彼も泣いている。

「もう、手当ては終わったでしょうか?」

「行ったら斬るで」

明石の殺気に二人は座りなおした。










「少し、良いか?」

「----っ?!」

聞き覚えのない声に固まる審神者。

「手当てをしているのだろう?そのままで良い」

「………」

誰だ誰だ誰だ…………彼女の頭の中ではその言葉がぐるぐると回る。

「すまんな」

「!」

「お主が一人で出陣しているのには気付いておった」

襖を挟んだまま、声の主は話し出す。

「ありえない、馬鹿らしいと頭ではわかっておるのだ。だがな、お主に何かあれば主が戻ってくるのではないかと、思ってしまった」

「…………」

「蛍丸や愛染と共にいる姿を見た時は、腹立たしくも思った。だが、それと同時に羨ましくも思った。俺も、主と共にありたいと………」

襖に浮かぶ影が段々と小さくなる。

「意地を張ったところで無意味だ。すまなかった。もし、もし、お主が許してくれるなら……」

「………あ、」

「主?」

「その……」

許すも何も、自分だって避けていたのだ。
謝るのは自分もだ。
でも、声が出ない。

「知っておるよ。人と話すのが苦手なのだろう?」

「…………」

「うん?」

すっと襖の隙間から出ていたのは、小さなメモ。

「………はっはっはっ!そうかそうか」

メモには控えめに書かれた、私もごめんなさい。

「よきかな、よきかな。こういうのもまた楽しいものだな」

ひとしきり笑うと、彼は姿勢を正す。

「三日月宗近。打ち除けが多い故、三日月と呼ばれる。よろしくたのむ」









「三日月さんが仲間になったな!」

「そうだね、でも早く退かないかな主に会いたいのに」

「そーだなー、ちょと邪魔だな」

柱の陰から、愛染と蛍丸が様子を伺っていた。
文句を言いつつも、その顔には笑顔が浮かんでいた。









ちなみに、厨。

燭台切と一期はまだ涙を流していた。

「はー、めんどくさ……」

そう呟く明石の口角も上がっていた。





まだ全員ではないが、少しづつ少しずつ………

刀剣男士は歩み寄る。












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