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刀剣男士はやり返す









その審神者は人付き合いが苦手である。

少しずつ、刀剣達との会話は増えてきているが、声が大きな者やぐいぐいと話しかけてくる者はまだまだ苦手なようだ。


打ち解けていない者もいる。

まだしばらくは時間がかかるだろう。











「国広!」


「国行!しっかり!」


その日、本丸内が慌ただしくなった。

出陣していた部隊が検非違使と遭遇したのだ。


部隊には堀川国広、山姥切国広、山伏国広、明石に蛍丸、そして審神者が同行していた。

せっかく兄弟揃ったのだからとこの編成にしたのだが、それが仇となった。

練度にバラつきがあり、一番練度の高い者に合わせて出てくるという検非違使は最高練度に到達していた山姥切に合わせて出現。


審神者もいたために勝利はしたが、堀川と明石が重症となってしまった。


手入れ部屋を出て少し、和泉守が慌てた様子で駆けてきた。


「主、国広は……」


「……て、手入れは……終わった。手伝い札もあったし………すぐに目を覚ますと思う……」


声の大きい和泉守に、審神者は肩をはね上げるが、堀川の容態についてきちんと答えた。


「そうか、明石は?」


「国行も、大丈夫…」


明石にも手伝い札を使った。

二人とも時期に目を覚ますだろう。


「なぁ、」


「は、はいっ」


眉間に皺を刻んだ険しい顔で、審神者を見つめる和泉守。


「俺は短気だし声もでかい。あんたが俺を苦手にしてるのは分かってる。でもな、少しだけ我慢してほしい」


険しい顔のまま、和泉守は頭を下げた。


「俺を使ってくれ!検非違使を、奴らを倒したい!国広の敵を取りたいんだ!」


「主殿!私も連れていって下さい!」


勢い良く現れたのは一期一振。


「ずっと、叔父上の敵を取りたいと思っておりました」


和泉守の横に立ち、彼は同様に頭を下げる。


「主!俺達も行くからね!」


「国行の敵も取らねぇとな!」


ひょこりと現れる来派の二人。


「でも……会おうと思っても、なかなか会えなかったり……」


検非違使は最初の一戦以外は必ず出るというわけではない。


「だったら出るまで行くまでだろ!」


「やられたらやり返さないとね!」


「ええ、やってやりましょう!」


「おう!」


彼らのやる気に普通の審神者ならば喜ぶのであろうが、彼女は苦い顔をしていた。











そうして、このメンバーで戦場を回っていたところ、ついにその時はやって来た。


鳴狐が折れてからというもの、前任は検非違使を避けていた。

故に皆、検非違使との戦闘は皆無。

雷鳴と共に現れた検非違使に、皆は息を呑んだ。


「燭台切さんじゃないけど、負けっぱなしはかっこ悪いよね」


「あぁ!」


柄に手を掛ける蛍丸に愛染。


「さぁ…和泉守殿、参りましょう!」


「おう!やってやる!」


一期と和泉守も構えた。


「主」


ちらりと審神者を見る和泉守。


「……うん、やり返そう…」


普段なら、絶対に合わない視線。

しかし、審神者はギラついた目でまっすぐ和泉守を見ていた。











「兼さん!」


門をくぐると、堀川が駆け寄ってきた。


「国広、やったぜ!」


「え、検非違使倒したの?!」


「おう!ほら…」


和泉守が指さす先には、困り顔の審神者と彼女に引っ付いている浦島虎徹。


「彼は……」


「浦島虎徹だ。長曽根さんじゃなかったけどな…」


「でも、蜂須賀さんが喜ぶね」


「そうだな」


浦島に引っ付かれわたわたとしている審神者を見ながら、二人は微笑む。


その周りには桜の花弁が舞っていた。










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