6ー2『………』 「せっかくです。周囲に目を向けてはいかがです?」 司馬師の背中に顔を押し付けたままの彩華。 『………』 おそるおそる、頭を動かした。 『………綺麗…』 やって来たのは、城から近い小さな泉。 「そろそろ下りましょう」 馬から下り、畔を歩く。 『………ありがと…』 「いえ、」 『怖かった、』 彩華は歩きながら、ぽつりぽつりと話し出した。 『周りの目が、怖かった……気にしちゃいけないとも思ってた……でも、襲われて……部屋から出るのが怖くなった………馬鹿みたいって思うかもしれないけど、扉を開けると、誰かがいるんじゃないかって……』 「………」 『馬鹿とか凡愚とか言わないの?』 「自覚してる方は凡愚とは言いますまい。自覚してないから、凡愚なのですよ」 『……なるほど…』 「………ところで、」 『?』 「お前はいつまで隠れてるつもりだ?」 「あ、兄上…」 司馬師が見つめる木の影から、司馬昭が出てきた。 「いや、その……心配だったんですよ!」 「馬鹿めがぁっ!!」 「うわっ!兄上!許して下さい!!」 「だから、やめた方が良いと言ったのに……」 『鍾会、いたのか?!』 邪魔をされ、怒る司馬師。 逃げる司馬昭。 呆れる鍾会。 彩華は戸惑っていた。 ―NEXT― << |