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「曹操殿が死に、曹丕殿が死に……それでも、貴女は動かれませんか……」

『部屋に来て、いきなりそれかい?』

部屋の主は、司馬師を見るなり、嫌そうな顔をして、持っていた筆を置いた。

『こうして仕事をしてるんだ。何か文句でもあるのかな?』

竹簡を指差しながら、けらけらと笑う。

「文句はありません」

『だったら、』

「もったいない、と思っただけです」

『うん?』

「貴女は、とても賢い」

再び筆へと伸びた手を、司馬師に掴まれた。

「何故、何もなさらないのか…」

怒ってるようにも、悲しんでるようにも見える瞳で、司馬師は彩華を見つめる。

『子元、私は別にどうだって良いんだよ。平和なら、それで良い』

「……彩華殿…」

『そんなに言うなら君が頂点を取ればいい』

「私が…?」

『何度も言うけど、私は人前には出たくない』

「良いでしょう。しかし、貴女が言ったのです。私の天下を支えて頂きますよ」

『取ってから言いなよ』

「取りますよ。貴女を手に入れるためにも」

『あれ?何かおかしな方向に行ってるね』

「それとも、今すぐ私の物になりますか?」

『ははっ!やってみろ』

彩華は、するりと司馬師の腕から逃れ、扉まで移動した。

「忘れられてる…?この私が…?!」

実は、扉の前で待たされていた鍾会。



―NEXT―



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