その少女、国造りに奔走する
-第66話-
「何をしておるのだ?」
廉夜が宮に戻ったと聞いた元就は、彼女を訪ねて摂津にやって来た。
そんな彼女は、のこぎりを持って木材と格闘中だった。
『兄さん、ちょうど良かった!そこ押さえててくれない?なかなか切れなくて』
「何をしておる?」
廉夜がこういう事が得意と知っている元就。
特に注意するでもなく、木材を押さえながら、再度質問。
『目安箱を作ろうと思って』
「目安箱…?」
『うん!城下に置こうかなって……よし、と…』
切り終えた木材を並べながら、廉夜は答えた。
『今回の事で……考えたんだ。直接、民の声が聞けたらなって』
「その目安箱が壊されたらどうする?」
作っている最中に、とんでもないことを口走る元就に、廉夜は苦笑い。
『大丈夫、孫市さんちの前に置かせてもらうから』
「孫市………あぁ、確か杖身の……」
『許可ももらってる』
「そうか……奴の噂は多少聞いておる。それならば安全であろうな」
楽しそうに笑いながら組み立てていく廉夜に、元就もわずかに口角を上げた。
「廉夜…」
「そんな心配する事ねぇって!廉夜は器用だしな」
少し離れた場所から廉夜達を見ていた三成。
先ほどから、おろおろしている。
そして、彼を抑える元親。
「……ヒヒッ…」
そんな彼らを、またまた少し離れた場所から見ている大谷は、楽しげに笑っていた。
そして―――
後日、城下に目安箱が設置された。
城下にて、目安箱設置.