その少女、国造りに奔走する
-第59話-
『ありがとう、来てくれて』
「駆け付けると、約束した」
麒麟と平然と話す廉夜に、その場にいる者は皆、言葉を失う。
「廉夜ちゃん…?」
いつの間にか、門は開かれていた。
蒼太は目を見開き、廉夜を見ている。
「……何かやらかすとは思っていたが……」
『苦情なら、後でいくらでも聞くよ』
「左近」
「はい」
返事と共に、黒い影が動いた。
『―――っと、』
はらりと落ちる縄。
突然の解放感によろける廉夜を、麒麟は支えた。
『左近、彼も』
「う、わ」
廉夜の声と共に、侑真の縄も解ける。
「まさか……」
その光景を見ながら、郷長は思い出していた。
黄朽葉色の長い髪、丹色の瞳。
幼さを残す顔の娘。
話に聞いた新王と重なる少女。
なにより、麒麟と普通に話している。
「主、上…」
ようやく気付いた郷長は、自分が仕出かした事の重大さを知り、震え出すのだった。
郷長、気付く.