その少女、国造りに奔走する
-第58話-
―数日後―
「聞け!皆の者!」
街を覆う隔壁の外、拓けた場所には卿長と彼を守るように兵が控えていた。
そして、卿長の前には縄をかけられた廉夜と侑真。
隔壁の大きな門は閉ざされていた。
卿長が出かけるのを見計らって、閉められた門。
卿長の討伐を企てた者達の仕業だった。
しかし、こういう事を予測していたのか、卿長は廉夜と侑真を連れ出していた。
二人を人質に取られてしまい、民は動けずにいた。
「門を開ければ許してやる」
大きな声で、門の中にいる民に言う卿長。
「侑真…!」
「開けるな。兵が雪崩れ込んで皆死ぬ」
門の方へ行こうとする蒼太の腕を掴み、孫市は首を振った。
「くそ……こんな事になっているというのに、王は動かないのか?!」
民の一人が声を荒げる。
「先王と同じじゃないか!」
「また民を見殺しにするのか!」
一人が言うと、皆が口々に愚痴をこぼし始めた。
「おい!空を、見ろ!」
そんな時、門を見張っていた者が声を上げる。
「三、成…?」
日の光を浴び、輝く白銀の鬣。
それを見た家康は、驚きのあまりに目を見開いた。
「麒麟だ!」
「何故、こんな所に……」
ふわりと、音もなく、卿長の―――いや、廉夜の前にに降り立つ三成。
「台輔、何故……このような場所に……」
「……何だその様は…」
卿長を無視し、三成は月色の瞳で廉夜を軽く睨んだ。
その麒麟、到着.