その少女、国造りに奔走する
-第56話-
「兄ちゃん!なんで…!!」
侑真の声が家中に響き渡る。
「もう、皆限界なんだよ……」
「でも、兄ちゃん!……失敗したら……」
「死ぬかもな……」
「兄ちゃん……」
泣きそうな顔で兄の服を掴む侑真。
廉夜は何も言えなかった。
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「ごめんね、廉夜ちゃん。女の子を巻き込むわけにはいかない。何も聞かなかった事にして帰ってくれないか?」
落ち着いた頃、蒼太が廉夜に話しかけてきた。
『………いえ……私も、手伝わせて…!』
「何を言ってるんだ」
『……何でもいいから……』
「だけど……」
『私にも、関係あることだから………放っておけない……』
「どういう……」
「見付けたぞ!小僧!!」
大きな音と共に、扉が吹っ飛んだ。
「卿長!」
「貴様が石を投げたそうだな……」
「あっ」
侑真の腕を掴み、無理やり連れて行こうとする。
『待って…!』
「邪魔をするな!」
『ちょっ…』
卿長に腕を掴まれ、廉夜も家の外に連れ出された。
「……主じょ―――」
『だめ、左近』
「何をぶつぶつと………この娘も連れて行け!」
「は!」
卿長の命に素早く動く兵に、廉夜と侑真は縄をかけられてしまった。
その少女、捕まる.