その少女、国造りに奔走する
-第55話-
「………」
『………』
侑真の家に行くと、彼の兄がいた。
しかし、その手には剣が握られていた。
「兄ちゃん、それ……」
侑真は震える指で兄が持つ剣を指差す。
「思った以上に、早くばれたな……」
兄は、苦笑を浮かべながら剣を壁に立てかけた。
「ん?その人達は?」
廉夜達に目を向ける。
「えっと、その……」
『なんか、成り行きで…』
「そう、弟が世話になったね。僕は蒼太」
『私は、廉夜』
「そちらは?」
「何故、私が名乗らねばならん」
『ちょっと……』
ぎろりと、蒼太を睨む三成に、廉夜は困惑。
「まぁ、いいよ。廉夜ちゃんの知り合いなんだね?」
「僕だ」
「え?」
『気にしないで!!後で行くから、どこか宿にでも行ってて!お願いだから!!』
「おい!」
慌てた廉夜は、三成を家から出した。
「おい!廉夜!!」
『ちゃんと行くから!!』
「………チッ………左近、廉夜から離れるな」
「はい」
左近を廉夜の影にこっそりと潜り込ませ、三成は家から離れた。
『(麒麟が舌打ちした…)』
最高位の霊獣、麒麟の舌打ち聞いてしまった廉夜。
しばらくの間、固まっていた。
「良かったのかい?」
『彼がいたら話が出来そうになかったから……』
苦笑を浮かべる蒼太に、廉夜も苦笑を浮かべて答えた。
「それで、兄ちゃん…」
「あぁ、実はね……近いうちに卿長を討とうと思うんだ……」
「なっ…!」
「そのための、人も武器も揃っている」
蒼太の真っ直ぐな瞳をみて、廉夜と弟は言葉を失った。
少年の兄、決意する.