その少女、国造りに奔走する



-第4話-



 
その少女、廉夜という。
年は十四。

生まれは摂津だが、親を幼い頃に亡くし、瀬戸内の親戚の元に移った。

彼女の趣味は読書。
いつも暇さえあれば書物を手にしている。

今日もまた、自室で書物を読んでいた。



―――と、その時、

「廉夜、区切りの良いところでやめよ。八つ時にするぞ」

現れたのは、幼馴染みの毛利元就。

『兄さん………大丈夫なの?』

彼とは兄弟のように育ってきた廉夜は、彼を兄さんと呼ぶ。

「今日の仕事は終わらせてきた。問題ない」

『いや、そうじゃなくて……』

「茶を淹れてまいれ」

『王様がこんなところにいたら危ないよ…』

彼はこの瀬戸内の王。
このような場所にいてはいけない。

「使令をつけておる。案ずるな」

『……まったくもう…』

書物を机に置き、廉夜は立ち上がった。

敬語も使わず、ぶつぶつと文句を呟きながら、茶を淹れる。
王に向かってこのような態度。
問題ありだが、そこは彼が普通にしてしろと廉夜に言ったのでこんな関係となっている。

普通の少女のように騒がない廉夜を、元就は側に置き、廉夜も物静かな元就を慕った。

特に何をするでもなく、二人で静かに過ごす日々。



そんなある日、二人の前に麒麟が現れた。

しかし、二人の関係は変わらず、相も変わらず静かに過ごしている。

元就が即位して五年ほど。
王という立場でも、こうして時折、廉夜が一人の時を見計らって様子を見に行く。



「……早かったな」

ふらりと現れた、瀬戸内の麒麟。

『あれ、元親』

書物に目を向けていた廉夜も顔を上げ、麒麟の名を呼ぶ。

「いつも悪いな、廉夜」

『ううん。私も嬉しいから』

苦笑する麒麟、元親に廉夜も微笑みながら、湯飲みを追加し、彼の前に茶を置く。
そして、再び書物に目を落とした。



その少女、読書に耽る






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