その少女、国造りに奔走する
-第53話-
『……え…』
廉夜が卿長を見ていると、横から石が飛んできた。
飛んできた方向へ振り向くと、駆けて行くあの少年の姿。
『―――っ!』
廉夜は慌てて少年を追って走り出した。
「今、石を投げたものは誰だ?!捕らえろ!!」
後ろから卿長の声が聞こえたが、気にしてなどいられない。
先に見付けないと、きっと彼は殺されてしまう。
「廉夜ちゃん?!」
『ごめんなさい!!訳は後で話すから!!』
事情をよくわかっていない慶次達にそう言って、廉夜は走り続ける。
「よし!追うぞ、慶次!」
「え?!」
廉夜を追って、家康も走り出す。
それを見た慶次も、二人を追って走り出すのだった。
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『侑真君』
「……姉ちゃん…」
なんとか追い付き呼び止めた。
『…なんで、石を…』
ぜえぜえと息を吐きながら聞くと、彼は顔を歪めて答える。
「だって……あんなの許されないだろ!!」
『まぁ、気持ちはわかるけど……』
「離れろ、小僧」
『え……』
聞こえるはずのない声が聞こえ、少年へと伸ばされた手は、彼に触れる事なく止まった。
目立つ白銀の髪は隠されていたが、月色の瞳が二人を見つめていた。
その麒麟、舞い降りる.