その少女、国造りに奔走する
-第50話-
『竹千代…?』
「あぁ」
『私は、廉夜』
「そうか、廉夜。勇気があるな。郷長にあのような……」
『まぁ、その……とっさで…』
「お前も…」
「撫でるなよ!」
頭を撫でる青年の手を叩き、そっぽを向く。
『そういえば、君は何ていうの?』
「………侑真…」
『侑真君、ね』
「廉夜ちゃん!」
『あ、慶ちゃん』
「家や―――」
「あぁ、久しいな慶次」
「あぁ、竹…千代…」
『………?』
なにやらぎこちなく挨拶を交わす二人に、首傾げる廉夜。
『千代さんは慶ちゃんの知り合い?』
「千代さん?!」
「ははっ、それでもいい。まぁ、ちょっとな…」
「侑真!!」
「兄ちゃん!!」
少年の兄らしき人物がやって来た。
「お前また…」
「だって…」
「郷長に歯向かうなって言ってるだろ?!」
「このままで良いのかよ?!これじゃ、前と変わらないじゃないか…」
悲しげに俯く少年に、廉夜は胸を締め付けられるような思いになる。
『王様が、変わったんだ……きっと……』
国を変えるために城下に下りた。
自分にも言い聞かせるように、少年に声をかける。
「変わらないよ」
『え?』
「だって、あんな郷長をほっとくんだ……前の王様と同じに決まってる!!」
そう言って、少年は走り去ってしまった。
「悪いね」
一言廉夜に言い、兄も少年を追って行ってしまう。
『…………』
改めて、自分の無力さを知った名前。
少年を追いかける事は出来なかった。
その少女、痛感する.