その少女、国造りに奔走する
-第35話-
『ちょっと……大丈夫、ですか?』
見たところ、怪我はないようだ。
先に兎を逃がし、男に声をかけた。
しかし、無反応。
『どうしよう……』
「主上、あちらに泉がありました。運びましょう」
『左近』
男を背に乗せ、左近は歩き出した。
廉夜も追いかける。
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水で濡らした手拭いを、男の額に乗せる。
『何があったんだろ…』
外傷のない男を眺めながら、廉夜は呟いた。
「おそらく、あの兎が原因かと……」
『兎が…?まさか、蹴られて気絶とか?』
「そうではなく……仁の生き物ですから…きっと、罠にかかった兎を放ってはいられなかったのでしょう。しかし、血の匂いにやられてしまった。まぁ、そんなところかと……」
『……え?』
「え?」
左近の説明。
それを聞く限り、この男はまるで―――
『………麒麟?』
「毛色から、小田原の台輔かと」
小田原の麒麟、話には聞いた事はある。
しかし、会うのは初めて。
廉夜は、未だに目を覚まさない赤麒麟を凝視するのだった。
その少女、
赤麒麟と出会う.