その少女、国造りに奔走する
-第14話-
なんとか王宮の中へ侵入出来た。
兵の話によると、冢宰は捕らえられているとのこと。
「大谷が捕まるとは……な…」
『そんなに、すごいの?左将軍って…』
「いや、大谷はくせ者よ。そう簡単には敗けはせぬ。おそらく、麒麟を思うての事であろう」
血や穢れに弱い麒麟。
王宮を血に染めないために、抵抗しなかったのだろうと、元就は言う。
『兄さんは、冢宰を助けて』
「何…?」
『私は、大丈夫だから』
「だが……」
ろくに戦えない少女を一人にするわけにはいかない。
そう思い、廉夜へと伸ばされた腕は、彼女に触れる前に止まる。
二人の前には、黒狼の妖魔。
「主上、私が玉座まで案内致します」
『君は、三成の……』
「左近、と申します。台輔の命にて、参上致しました」
『そういうわけだから、大丈夫だよ。兄さん』
「……廉夜に怪我をさせるでないぞ」
「言われずとも」
「……フン」
使令の返事を聞くと、元就は廉夜達に背を向け歩き出す。
『行こう、左近』
「はい、主上」
元就を見送り、廉夜も駆け出した。
その少女、
玉座を目指す
使令の名前、『島 左近』から取りました。
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